アスリートのドーピングで使われる心臓治療薬はいくつもある
トリメタジジン以外でも、禁止薬物に指定されている心臓治療薬がいくつかあります。たとえば「ニトログリセリン(硝酸薬)」です。こちらも血管拡張薬で、冠動脈をはじめ全身の血管を強力に拡張させる作用があり、狭心症の症状を改善させます。アスリートでは、同じく血流を良くして心臓への酸素供給を増やし、持久力などを強化する目的で使うのでしょう。これも、血圧を急激に下げて死亡につながる危険があります。
心不全の治療に使われる強心薬の中にも禁止薬物になっているものがあります。急性心不全で血圧や心拍出量を増加させなければならない場合に用いられる「カテコラミン系強心薬」は、心筋の収縮に関わるアドレナリンβ受容体を刺激して収縮を増強し、心機能を改善させる薬です。
アスリートが使えば、血流や心拍数を一時的に増やしてパフォーマンスを上げることが可能です。しかし、心臓の収縮力が高まり過ぎて、心室細動などの致死的な不整脈を引き起こす危険があります。突然のショッキングな出来事に驚いて、心臓がバクバクする状態を薬でつくり出すわけですから、心臓にかかる負荷は非常に大きくなるといえます。