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天野篤順天堂大学医学部心臓血管外科教授

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

アスリートのドーピングで使われる心臓治療薬はいくつもある

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 3月4日に北京冬季パラリンピックが開幕し熱戦が繰り広げられていますが、先に閉幕した北京冬季五輪では、女子フィギュアスケートのカミラ・ワリエワ選手(ROC=ロシア・オリンピック委員会)のドーピング違反が騒動になりました。

 ワリエワ選手は昨年12月に行われたロシア選手権で採取した検体から「トリメタジジン(バスタレル)」という禁止薬物が検出され、出場継続をめぐって大きな混乱を招きました。

 トリメタジジンは、狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患の治療に使われる経口薬で、血管を拡張して血流を良くしたり、心筋の代謝を改善したり、血管の中で血液が固まるのを防ぐ作用があります。アスリートが使用した場合、血流が増加することで持久力が強化され、運動後の回復も早くなる可能性があるため、禁止薬物に指定されているのです。

 トリメタジジンもそうですが、心臓疾患の治療薬には血管拡張作用のあるものが数多く存在します。心臓は収縮と拡張を繰り返して全身に血液を送り出し、酸素や栄養を供給しています。血液を送り出すときは相応の力が必要ですが、血管が硬く狭くなっていたりすると、それだけ大きな力=高い血圧が必要になり、心臓には負荷がかかります。逆に血管が広がって血液を送り出すときの抵抗が減れば、心臓にかかる負担が少なくなります。心臓にトラブルを抱えてポンプ機能が衰えている患者さんにとっては、心臓に“楽”をさせる薬を必要とするケースが多いのです。

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