著者のコラム一覧
永田宏長浜バイオ大学コンピュータバイオサイエンス学科教授

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

「サル痘」が世界に感染拡大! ラクダ痘・天然痘の関係は…医療情報学教授が解説

公開日: 更新日:

「種痘」廃止の影響か

 ラクダ痘は中東を中心に、ラクダがよくかかる病気として知られている。中東では、実に4000万頭のラクダが飼われている。しかしラクダ飼いたちをいくら検査しても、陽性反応が出てこない。そのためラクダ痘は人には感染しないと言われてきた。ところが2011年、インドでラクダ痘感染者が3人確認された。症状は軽く、手や指に水疱やかさぶたができた程度だが、ともかくもラクダ痘が人にも感染することが確認されたのである。

 01年の9.11テロの後、当時のブッシュ政権が大慌てで「希望する国民全員に種痘を行う」と宣言した背景には、ラクダ痘に対する懸念もあったから、といわれている。というのも、以前からイラクでラクダ痘の研究が行われていたからである。もちろんイラクでもラクダは大事な家畜だから、その病気を研究するのは当たり前。だがテロ直後のアメリカには、そんな冷静な判断をする余裕すらなかったのかもしれない。

 しかし確かにラクダ痘ウイルスは、うまく改良できればバイオテロにうってつけだろう。もともと天然痘ウイルスとよく似ているのだから、人への感染力を高め、毒性を上げるのは、さほど難しくないのではないか。

 天然痘は感染力が強く、致死率が20~50%にも達する、人類史上最悪の感染症のひとつだった。幸いにして、世界中で種痘が実施された結果、1970年代までに根絶したが、そのため現在40代以下の人たちは種痘を受けていない。感染力と致死率を高めた改良型ラクダ痘ウイルスがまかれたら、世界が大混乱に陥ること必至である。

 もちろん空想に過ぎない。ただ今回のサル痘騒動も、実は種痘が廃止されたことが影響しているらしい。アフリカ現地での研究によれば、サル痘の重症者の平均年齢は、1980年代には4~5歳だったのが、2000年代には10歳に上がり、10年以降は20歳に達しているという。つまり、種痘を受けていない世代の年齢が上がった結果、サル痘患者の平均年齢も上がってきているのである。日本も他人事ではない。いま46歳以下の人の大半は、種痘を受けていないから、サル痘への抵抗力を持っていない。うまく水際で防ぐことが肝要だろう。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大友康平「HOUND DOG」45周年ライブで観客からヤジ! 同い年の仲良しサザン桑田佳祐と比較されがちなワケ

  2. 2

    阪神・西勇輝いよいよ崖っぷち…ベテランの矜持すら見せられず大炎上に藤川監督は強権発動

  3. 3

    歌手・中孝介が銭湯で「やった」こと…不同意性行容疑で現行犯逮捕

  4. 4

    佐々木朗希の足を引っ張りかねない捕手問題…正妻スミスにはメジャー「ワーストクラス」の数字ずらり

  5. 5

    阪神・藤川監督が酔っぱらって口を衝いた打倒巨人「怪気炎」→掲載自粛要請で幻に

  1. 6

    巨人・小林誠司に“再婚相手”見つかった? 阿部監督が思い描く「田中将大復活」への青写真

  2. 7

    早実初等部が慶応幼稚舎に太刀打ちできない「伝統」以外の決定的な差

  3. 8

    「夢の超特急」計画の裏で住民困惑…愛知県春日井市で田んぼ・池・井戸が突然枯れた!

  4. 9

    フジテレビを救うのは経歴ピカピカの社外取締役ではなく“営業の猛者”と呼ばれる女性プロパーか?

  5. 10

    阪神からの戦力外通告「全内幕」…四方八方から《辞めた方が身のためや》と現役続行を反対された