「心筋保護液」はさまざまな試行錯誤の末に確立された
■血液を混ぜる方法も
1990年代に入ってもさらに試行錯誤は続きます。心筋保護液を使えば心筋細胞の代謝はある程度は落ちるものの、無酸素の状態が続くため心筋のダメージが残りやすいのではないかといった考えから、心臓を冷却する最適な温度が模索されます。4度から20度前後まで試され、さらに心臓を停止させている時間は1時間30分くらいまでは安全で3時間を超えると危険になる、その間の時間は個人差が大きいといったようなさまざまな学説が出てきました。
心筋保護液についても、従来のものに不整脈を抑える薬や心筋保護作用があるアミノ酸を加えるなど、さまざま工夫が続きました。
ちょうどそのあたりの頃から、過去に心筋梗塞を起こして心機能が低下している状態の患者さんに対する再手術が行われるようになります。その場合、従来のように心臓を冷却したうえで心筋保護液を使う方法では、手術成績があまり良くありませんでした。いったん止めた心臓を術後に再び動かして血流を再開させても、収縮が不十分なケースが多かったのです。