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名郷直樹「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

「情報の当てはまり」について改めて考える…動物とヒトとの距離は遠い

公開日: 更新日:

 しかし、そのランダム化比較試験でいかに正しい結果が得られようが、またそれが個別の状況では、個々の患者に当てはまるとは限らないということでもある。ただ、動物実験よりはそのギャップが縮まったということはある。

 さらに、ランダム化比較試験での当てはまりについても少し考えてみる。マスクでは例が示しにくいので、ここでは高コレステロールを考えてみよう。

 たとえば、高コレステロールの患者を対象とし、薬を飲むグループと飲まないグループを比較し、その効果の判定をコレステロールの低下の程度で検討したランダム化比較試験を考えてみる。これでヒトでの研究結果が出たといえるかどうかということであるが、これではまだ現実の高コレステロールの患者との距離は遠いのである。

 コレステロール治療薬の研究の歴史を見てみると、現在使われているスタチンという薬が出る以前では、コレステロールは下がったが心筋梗塞は予防できなかった、むしろ死亡が増加したという研究結果が主流で、コレステロールが下がったからといって、その先の心筋梗塞や脳卒中が予防できているとはいえなかったのである。

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