優等生が一転、20年超のひきこもりに…「子ども」の視点
前回、不登校やひきこもり、ひいては精神疾患の原因には「感情不全」が潜在し、それが生じる背景には親子間のボタンの掛け違いの影響が極めて大きいというお話をさせていただきました。
ここで具体例をひとつ挙げてみましょう。
20年以上ひきこもりの生活が続き40歳を過ぎたばかりの男性Aさんは、お父さまが医師で、親からは跡を継いでほしいと言われ、親族などにも将来が楽しみと期待をかけられていました。子どもの頃から医学部に行く、親の期待に応えたい、医師となって周囲を見返してやりたいといった気持ちが強く、中学までは手のかからない優等生として過ごしてきました。
高校も名門の進学校に合格はしたものの、同級生も優秀な子たちが集まるその中で、成績は伸び悩み、とてもその期待には応えられないと苦しみ続け、心が折れてしまい、不登校が始まったのでした。
ある日、どこか体調が悪いのではないかと母親に付き添われ、最初は総合病院の内科を受診したものの、担当医からはどこも体は悪くないと説明された後、「いるんだよねー、体はどこも悪くないし頭もいいのに、君みたいな“もったいない”子が」とあきれ顔で言われたのだそうです。その言葉にAさんは非常に傷つき、診察室を出た後、病院の廊下の椅子に思わずしゃがみ込み、まさに泣き出そうとしたその瞬間、お母さまからは「男のくせに何を泣いているのよ、みっともない!しゃきっとしなさい」と強い口調で叱られたのでした。