著者のコラム一覧
最上悠精神科医、医学博士

うつ、不安、依存症などに多くの臨床経験を持つ。英国NHS家族療法の日本初の公認指導者資格取得者で、PTSDから高血圧にまで実証される「感情日記」提唱者として知られる。著書に「8050親の『傾聴』が子供を救う」(マキノ出版)「日記を書くと血圧が下がる 体と心が健康になる『感情日記』のつけ方」(CCCメディアハウス)などがある。

「二次反応」という名の消えないノイズで頭が効率的に回らない

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 実際、本音の気持ちを押し殺しているだけで、数学の難問ほど解答力が落ちケアレスミスが増えます。その一方で、本音の一次感情を書き記す「感情日記」(私の造語ですが)に20~30分かけて3回書くだけで、ワーキングメモリが改善し、数学の得点が上がり、米国では医学部や法科大学院の入試成績をも上げうるといった研究すら存在するほどなのです。

 また、感情不全は正常の体の動きもバグを起こすため、パニック発作、過敏性腸症候群、不眠による昼夜逆転などの自律神経失調も生じさせます。今流行のマインドフルネスやヨガといった瞑想も、一次感情を感じれば苦悩が消退していき、突き詰めれば“ゾーン状態”が得られるという点では、じつは目指すところは一緒で、うまくいけばまったく同じ効果が期待されます。

■親による傾聴・共感に勝るものはない

 ただ、これらのセルフで一次感情を感じるスキルは、ある程度一次感情を健康に感じる力があることが前提です。そのため、逆に不登校ひきこもり、精神疾患に罹患しているなどの状態では、一次感情にロックが強くかかっている感情不全を生じていますので、深呼吸やリラクセーション効果は得られても、それ以上の段階に進むとかえって雑念が増えて苦しくなったり、眠気ばかり襲ってきて何をしているのかわからなくなって挫折される方も少なくありません。本人が自らやりたいというのならばぜひ試されるとよいと思いますが、逆に感情不全を生じさせている親御さんが、「お前は気持ちが弱いでの瞑想でもやって心を整えた方がいい」などと一方的に押し付けるのは筋違いで、実際に逆効果となる危険性もあります。

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