著者のコラム一覧
最上悠精神科医、医学博士

うつ、不安、依存症などに多くの臨床経験を持つ。英国NHS家族療法の日本初の公認指導者資格取得者で、PTSDから高血圧にまで実証される「感情日記」提唱者として知られる。著書に「8050親の『傾聴』が子供を救う」(マキノ出版)「日記を書くと血圧が下がる 体と心が健康になる『感情日記』のつけ方」(CCCメディアハウス)などがある。

歪んだ「二次感情」はどんな思考や行動をもたらすのか?

公開日: 更新日:

 前回、子どもが一次感情を正しく感じきれない一次感情不全だと、一次感情が過剰に膨らんだり、脳のノイズとして消えない人工(二次)感情が増殖する、といったお話をしました。今回はそれらがもたらすそれ以外の不適応反応についてお話します。

 大きく分けて3つあります。ひとつは「自己肯定感の低さ」「虚無感」といった歪んだ思考や価値観、もうひとつは「前向きさ」「達成感やヤル気」「喜び」などのバイタリティの喪失です。そして3つ目は、「暴飲暴食」「暴言暴力や自傷」「ゲーム、ギャンブル、買い物などの依存」といった問題行動です。これは、すべて一次感情不全に端を発した回避的な二次感情を含む、二次的反応の行き着く先として説明されます。

 いわば本能の感情とも言うべき一次感情を「苦痛だから」と目を背けるだけで、いくらもっともらしく自分の本音を取り繕おうとしても、そのしわ寄せの結果、矛先は周囲には到底理解できない歪んだ思考や価値観、問題行動、異常な身体感覚という形で制御不能な二次反応を生じさせてしまいます。

 たとえばひとつ目の歪んだ思考や価値観は、本来感じるべき自分の魂の叫びでもある一次感情を感じることが叶わぬ苦痛を正当化するためには「自分にはその価値がないから」「そもそも人生なんて何もかもすべて思い通りにいかない虚しいもの」「つらい出来事があったのはそういう卑屈な運命なわけだから、無駄な抵抗などせずにすべて受け入れるしかない」と矮小化して考えることで、苦痛な一次感情に向き合う必要性を薄れさせる認知的回避という現象で説明されます。

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