著者のコラム一覧
新井平伊順天堂大学医学部名誉教授

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

熱中症救急搬送は高齢者が半数以上を占める…若年者よりリスク高

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親がクーラーをつけない「暑くないら大丈夫」をうのみにしない

「窓を開けてたら、いい風が吹くんやで。お風呂上がりは、お父さんと、ここで涼んでるんや。クーラーなんて、孫が来るとき以外、一回も使ったことあらへん。窓開けて寝ると、明け方は涼しすぎるくらいや。扇風機もいらん」

 この母親の言葉を、東京在住の40代女性は疑いもしていなかったそうです。自分が実家に住んでいた当時はクーラーはなく、扇風機だけで夏を乗り切れたから。実家の周辺は一面田んぼで、風を遮るものはありません。夏は一日中クーラーをつけっぱなしの東京の自宅と比較し、田舎は羨ましいとすら、思っていたそうです。

 ところが一昨年夏、考えを改めました。これまで実家に帰るのは年1回、年末年始だけ。しかし、なんとなくその年は8月に帰省。夏に実家で過ごすのは、大学進学で上京して以来、実に30年ぶりのことでした。

「明け方は涼しすぎるくらいなんて、とんでもない。暑すぎて、即行でクーラーをつけました」(女性)

 年々気温は上昇し、夏の猛暑日の日数も増加。30年前はクーラーなしでも問題なかったとしても、それは現代には通用しない。かつ、両親が年を取り、暑さに鈍くなっていることにも、意識がいっていませんでした。

 熱中症対策をなんとかしなければと考えた女性。「クーラーは不要」と言う両親に対し、年を取ると熱中症になりやすい理由を丁寧に繰り返し説明。両親ともLINEを活用していたので、両親・自分・弟・弟の子供(両親からすると孫)のグループLINEを作り、「水飲んでる?」「クーラーの設定温度は何度?」と頻繁に呼びかけるようにしたそうです。特に効き目があったのが、孫からの言葉だったとのこと。

 熱中症は、認知症の人ではよりリスクが高くなります。季節や時間帯をうまく認識できず、暑さ・寒さに応じた服装の調整が難しくなり、また水分補給の管理ができなかったり、暑いから室温を下げようという判断ができなかったりするためです。

 高齢のご家族がいる方、特に認知症のご家族がいる方は、夏を迎える前から熱中症対策を意識するようにしてください。

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