「夏の不眠」解決策の1つに薬の見直しを…5割超のエアコン節約派は考えるべき
寝苦しい夏は、まだまだ続く。そんな猛暑に快眠を得るにはエアコンが必須だが、エアコン所有者でも朝までつけたままの人はおよそ半数にとどまる。昭和世代に残る「エアコン=体に悪い」という誤解が影響しているのかもしれない。不眠を感じる中高年は、エアコンや薬を含めて、睡眠環境を広く見直してみてはどうか。
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ダイキン工業は20~60代の男女530人を対象に「熱帯夜の熱中症対策とエアコン使用に関する意識調査」を実施。その中で熱帯夜の悩みを質問すると、約46%が「暑くて目が覚める」と回答し、「なかなか寝付けない」が33%で続いた。寝具の不快感も24%で、約76%は何らかの悩みを感じていた。
熟睡できないせいか、熱帯夜の睡眠時や起床時に「倦怠感」や「異常な発汗」などの症状を感じたのは約69%に上る。熱中症が疑われる症状といえるが、約34%は「(熱中症の)対策をしていない」と回答した。
熱帯夜のエアコン使用については、約82%は使用しているものの、「朝までつけっぱなし」は約46%にとどまっていて、「タイマー設定で途中で切る」(約44%)、「寝る前に部屋を冷やして切ってから寝る」(約5%)、「暑さや寒さで目が覚めてつけたり消したりする」(約5%)といった“節約運転派”が合計で5割を超える。これでは、寝苦しさは解消されず、暑くて目が覚めるのも当然だろう。
明陵クリニック院長の吉竹弘行氏が言う。
「中高年の場合、睡眠薬や睡眠導入剤を処方されているケースが珍しくありません。それで、多少の寝苦しさはあっても、薬の効果で何とか睡眠状態に至っている可能性はあるでしょう。しかし、夜間も30度近いことがある日本の酷暑では、熱帯夜はエアコンを28度くらいでつけっぱなしで快眠を得るのが正解です。適切な快眠環境をつくらずに中高年が睡眠薬などに頼ると、夜間に知らず知らずのうちに熱中症を進行させる恐れがありますから、寝苦しさをキーワードに睡眠環境を細かく見直すことがとても重要です」
熱帯夜のエアコンは28度を目安に、それぞれが寒過ぎず、暑過ぎないようにつけっぱなしで使うこと。それが快適に過ごして体を守る知恵であって、吉竹氏も「エアコンが体に毒ではありません」と断言する。そんな中高年の意識改革のほかにも、睡眠環境の改善にはやるべきことがいくつもあるという。どんなことに着目すればいいか。吉竹氏に詳しく聞いた。
■約2割の未使用組の背景に睡眠薬?
冒頭のダイキンの調査で「エアコンを持っていない」は2.6%で、「使用していない」は15.8%だった。ここ数年、猛暑で熱中症の搬送者が増加傾向で、そんなときに問題となるのが、エアコンがない、使わないという未使用だ。
冷涼な地域に住む人なら、夏のエアコンより冬のストーブの方が重要なのかもしれないが、熱中症で救急搬送される人が相次いでいる現実を知ると、「体温並みの暑さでなぜエアコンを使わないのか」と首をひねりたくなる。その背景に、薬の影響があるかもしれないという。
「65歳以上は全体として3人に1人は5種類以上の薬を処方されていて、その割合は年齢が上がるほど高くなり、75歳以上は4割です。その中には慎重な投与が必要な薬も含まれていて、その典型がベンゾジアゼピン系睡眠薬や睡眠導入剤として使用されることもある抗不安薬なのです。体温並みの猛暑で夜間も気温がそれほど下がらずに、これらの薬を服用して、エアコンのない状況で深い眠りについてしまうと、本人が気づかないうちに熱中症が重症化する恐れは十分あります」
なるほど、熱帯夜でも睡眠薬で強制的に眠ってしまえば、エアコンなしやエアコンのタイマーが切れて室温が再上昇しても、それなりに眠っていられるかもしれない。そう考えると、過酷な睡眠環境で眠りについている人が少なくないのも合点がいく。電気料金を気にして節約したくなる事情もあるだろう。そうすると、高齢者の睡眠環境の改善で考えるべきは薬の見直しだ。
「快適な睡眠環境には、安全が大前提です。中高年にとって、ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、できる限り作用時間の短いものに変更して、使用する場合でもなるべく少ない用量にするのが無難。そうではない非ベンゾジアゼピン系でも、少量にとどめて減量や中止を検討するのがよいでしょう。中高年、特に高齢者は複数の薬を服用していることが多く、含有成分が重なりやすいほか、薬剤の代謝や排泄にかかわる肝臓や腎臓の機能が低下し、薬剤が長く体内にとどまりやすい。そうしたことの影響で、本来期待される作用も、期待されない副作用も、強く出やすいのです」