長寿研究のいまを知る(9)長寿におけるmTOR阻害薬とカロリー制限の関係
IGF-1はインスリンによく似た化学構造を持つ成長ホルモンの一種で、主に肝臓でつくられる。食べて栄養成分が血中に増加すると検知して各細胞を活性化させる働きがある。
「今までは老化はさまざまなシグナル伝達経路や転写因子などの制御システムが崩壊することで起きることがわかっています。間欠断食はこのIGF-1が関係するシグナル伝達回路に影響すると考えられています。断食中にIGF-1濃度が低下し、食べることを再開した後もその効果が続いていることは、間欠断食効果が続いている間は体内が飢餓状態になるシステムが稼働している可能性があると考えられます」
IGF-1に関係する遺伝子に起きる変化は死亡率やさまざまな病気の罹患率を下げることが知られて、100歳以上が多い家系の女性のなかに多いことが報告されている。
つまり、mTOR阻害薬にしろ、断食によるIGF-1への影響にしろ、細胞が栄養不足と認識させることが長寿につながるということのようだ。(つづく)