長寿研究のいまを知る(6)老化細胞を取り除く「ワクチン」「薬」は競争が激化している
細胞は老化すると分裂を止めて老化細胞となり、動かなくなる。これは細胞分裂を繰り返すうちに損傷DNAの転写エラーが起きていびつな細胞が誕生し、それが体内で増殖し続けるのを防ぐ、がん抑制システムだと考えられている。
しかし、その一方で老化細胞が体内に居座り続け、それが蓄積していくと厄介な問題が起こる。蓄積した老化細胞からがん促進作用や炎症作用のある物質がまき散らされ、慢性的な組織損傷を引き起こし、がん、肝臓や肺の線維化、動脈硬化、糖尿病などに関係する炎症環境を生み出す。それが結果的に老化やがんにつながる。
ならば、体内に蓄積した老化細胞を取り除くことができれば、これらの疾患と共に老化を防ぐことができるかもしれない。そう考えるのは当然だ。
だからといって、全身に散らばっている老化細胞を、メスで切り取ることはできない。そこで考え出されたのが、免疫を使った老化細胞除去法だ。
免疫とは体内に侵入したウイルスや細菌など、体内の異物を発見し危ないか否か区別し、取り除くシステムのこと。