長寿研究のいまを知る(9)長寿におけるmTOR阻害薬とカロリー制限の関係
問題は、いつでもどこでも食べ物が手に入る現代において、ヒトが生涯にわたってカロリー制限を続けることは困難だということ。スーパーでのおやつや冷蔵庫のなかのアイスクリームからの誘惑を断ち切るには強い意志が必要だ。
そのため、カロリー制限の影響は短期的な研究とごく少数の経験談でしか語れないのが現状となっている。
そんななか、最近はカロリー制限をずっと続けなくても短期間で繰り返すことでかなりの効果が得られることがわかっている。
「一定時間だけ体を飢餓状態にすることを繰り返す間欠断食が寿命の延長に効果があることがわかりつつあります。間欠断食の方法はさまざまで、1日の食事を8時間以内で取り、残り時間は何も食べない、という方法もあれば、1週間のうち2日はカロリー制限して残りの日数は普通に食べるなどがあります。ある研究では参加者に対して1カ月のうち5日はカロリー制限して残りの日数は普通に食べさせる生活を続けたところ、始めて3カ月で体重、体脂肪、血圧などが低下しました」(根来医師)
このときとくに注目されたのはIGF-1(インスリン様成長因子-1)の濃度が低下したこと。