認知症で舌がん…対話困難な患者とどう信頼関係を構築していくか
在宅医療では対話が重要ですが、中には会話がうまく成り立たない患者さんもいます。
その理由はさまざまです。病気によって発話機能が損なわれ、一般的な会話が難しくなることもあれば、患者さんの性格による場合もあります。特に高齢になると、感情のコントロールが難しくなり、怒りっぽくなることで対話が困難になることも少なくありません。
また、突然怒りっぽくなったり、ささいなことで感情をあらわにする場合、認知症の初期症状のひとつである「易怒性(いどせい)」が現れている可能性もあります。
今回の患者さんは、病院から紹介を受けた60代前半の舌がんを患う女性でした。申し送りには「易怒性が強く、人をなかなか信用しない。診察の時間に来なかったり、舌がんの手術の影響で話しづらさがあることから病状について話してくれなかったりするため、関係構築が難しい」と記されていました。
実際、私たちが初めて自宅を訪れた際も、見知らぬ人が来たということで入室を拒まれ、玄関先に立ったまま、ベッドにいる患者さんと大きな声でやりとりをするほどでした。さらに、発話が不明瞭なため何度も聞き返すと、「今は私が話してるんだから黙って聞け!」と怒鳴られてしまう始末でした。