「トリチウム水」を分離する装置 関係者の多くが期待した画期的な技術
折しも政府と地元の溝が深まっていた時期
折しも政府が、福島第1原発にたまり続けるトリチウム水の処分を検討する有識者会議を設置。海洋放出を中心に検討を重ねていたのに対し、風評被害を懸念する地元漁協関係者らが反対し、「溝」が埋まることなく、平行線をたどっていた時期と重なった。
トリチウムの除去について、近大の研究チームは「実験室レベルの初期段階で、ほぼ100%除染されていることを確認した」と説明。トリチウム水の処理に一石を投じる研究成果に、この研究を主導する工学部の井原辰彦教授(当時)は「福島第1原発の汚染水の量を減らしたい」と胸を張った。
トリチウムを取り除ける画期的な技術さえあれば、難航を極める「処理水」の処分も丸く収まるのではないか──。関係者の多くが研究チームの画期的な技術に期待し、除去システムの確立と実用化に夢を膨らませた。メディアも当時は「処理につながる技術として期待」と歓迎したものだ。
しかし、共同研究者のひとりは、研究成果の発表に対し、一抹の不安を抱いていた。 =つづく
(取材・文=今泉恵孝/日刊ゲンダイ)