新規開発バブルで潤うのは外部参入企業やコンサルばかり…小規模零細には出る幕なしか
軽井沢町から近い小諸市で人力車夫として観光業に従事する喜楽屋笑太さん(40代)の内心は複雑だ。小諸市もインバウンドの活気が戻り、一見、盛り上がっているように見える。「けれども、資金が流れていく先は外部から参入した企業やコンサルだったりする。昔から頑張ってきた事業者が置き去りにされている感じがします」と訴える。
高山市内でも「行政は大手資本の新規事業を応援しても、小規模事業者には背を向ける」という不満をあちこちで聞いた。確かに同市ホームページには、補助金や融資などいくつかの助成メニューはある。だが「実際には審査は厳しく、長期的に見ても小規模事業者に有利なものとはいいがたい」(同市の小売り事業者)。
そして、高山市内の観光事業者は別の危機感も持っている。
「日本ファンの外国人観光客の中には毎年訪れるリピーターもいますが、高山の静寂や地元の生活・人情がなくなれば、早晩来なくなります。今の訪日客は“日本ブーム”だから来ている人たち。彼らが次の目的地へシフトしたとき、誰が高山に来るのでしょうか」(田中聡さん=仮名、50代)
政府は、6年後の2030年に6000万人のインバウンド客を誘致する目標を掲げ、そのための受け皿づくりが進んでいる。だが、観光ブームの終焉とともに廃虚と化した日本の観光地もある。肝要なのは、はやり廃りに左右されないことだろう。 (おわり)