著者のコラム一覧
松尾潔音楽プロデューサー

1968年、福岡県出身。早稲田大学卒。音楽プロデューサー、作詞家、作曲家。MISIA、宇多田ヒカルのデビューにブレーンとして参加。プロデューサー、ソングライターとして、平井堅、CHEMISTRY、SMAP、JUJUらを手がける。EXILE「Ti Amo」(作詞・作曲)で第50回日本レコード大賞「大賞」を受賞。2022年12月、「帰郷」(天童よしみ)で第55回日本作詩大賞受賞。

イスラエルを明確に批判した広島県知事。同国大使の表情を被せて大写しにしたNHKの英断よ!

公開日: 更新日:

 それに対し松井市長は「自分たちが心配すれば世の中全部思うように変えられるということではない。私はアンパイア、審判員でもないし、どこの国が正しい、悪いと言ってるわけではない」と木で鼻を括ったような回答。何だこれ。いまこの地球で起きている歴史的惨劇に対して、傍観者のスタンスをとる(とれ)と言わんばかり。これが〈国際平和文化都市〉の首長の公式発言かと目と耳を疑う。この会見内容を知っていたなら、昨夜の式の後に市長を引き留めて直接真意を問うたのに。

 熱いシャワーでも洗い流せないモヤモヤを心に携えたまま、タクシーで広島平和記念資料館へ。2019年に全面改修を終えた同館をじっくり観るべくネット予約しておいたので、8時半の一般開場に先がけて7時半に入場できた。東館から本館に進み、また東館に戻る。吉永小百合の抑制の効いた語りが耳に心地よい音声ガイドの力を借りながら2時間半かけて鑑賞した。かつて同館の象徴だった原爆再現人形を配したジオラマは撤去され、いまは実物資料(遺品、被爆者が自身の体験を描いた絵、当時の写真、証言映像など)の充実に重きを置いている。

 館内では個人撮影も可能だが、観終えて気づいてみれば一枚も写真を撮っていなかった。それだけ展示に引き込まれたからでもあり、撮影への躊躇がずっと払拭できなかったせいでもある。この矛盾する心のありようもまた戦争の生みだすものかもしれない。被爆国の一員として被害の実相を知ることは何より重要。だが自分たちの国がアジア太平洋諸国へ侵略と加害を重ねてきた歴史を直視することからも逃げてはならない。そう自分に言い聞かせながら退館する。酷熱の原爆ドーム前で懸命に署名運動をしている少年たちに学校名を問うた。「修道高校です」。なるほど、吉川晃司さんの後輩なんですね。

■関連キーワード

最新のライフ記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 暮らしのアクセスランキング

  1. 1

    兵庫県知事選「頑張れ、斎藤元彦!」続出の異常事態…まさかの再選なら県政はカオス確実

  2. 2

    首都圏の「住み続けたい駅」1位、2位の超意外! かつて人気の吉祥寺は46位、代官山は15位

  3. 3

    斎藤元彦氏猛追の兵庫県知事選はデマと憶測が飛び交う異常な選挙戦…「パワハラは捏造」の陰謀論が急拡散

  4. 4

    シニア初心者向け「日帰り登山&温泉」コース5選 「温泉百名山」の著者が楽しみ方を伝授

  5. 5

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏圧勝のウラ パワハラ疑惑の前職を勝たせた「同情論」と「陰謀論」

  1. 6

    斎藤元彦氏がまさかの“出戻り”知事復帰…兵庫県職員は「さらなるモンスター化」に戦々恐々

  2. 7

    悠仁さまの処遇めぐり保護者間で高まる懸念…筑付高は東大推薦入試で公平性を担保できるのか

  3. 8

    異様な兵庫県知事選の実態…斎藤元彦氏の疑惑「パワハラは捏造」の臆測が急拡散

  4. 9

    誰かがタレ込んだ? 国民民主党・玉木代表と元グラドルの密会不倫報道を巡る「新たな陰謀説」浮上

  5. 10

    「資格確認書」利用で窓口負担増の“ペナルティー”を政府検討 露骨な格差に識者も怒り露わに会員限定記事

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    西武ならレギュラー?FA権行使の阪神・原口文仁にオリ、楽天、ロッテからも意外な需要

  2. 2

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動

  3. 3

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  4. 4

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏の勝因は「SNS戦略」って本当?TV情報番組では法規制に言及したタレントも

  5. 5

    小泉今日子×小林聡美「団地のふたり」も《もう見ない》…“バディー”ドラマ「喧嘩シーン」への嫌悪感

  1. 6

    国内男子ツアーの惨状招いた「元凶」…虫食い日程、録画放送、低レベルなコース

  2. 7

    ヤンキース、カブス、パドレスが佐々木朗希の「勝気な生意気根性」に付け入る…代理人はド軍との密約否定

  3. 8

    首都圏の「住み続けたい駅」1位、2位の超意外! かつて人気の吉祥寺は46位、代官山は15位

  4. 9

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏圧勝のウラ パワハラ疑惑の前職を勝たせた「同情論」と「陰謀論」

  5. 10

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇