元キャバ嬢の「ギャル船長」が舵を取る極上カワハギ釣りを体験した
「釣れても釣れなくても『楽しかったね』って笑顔で帰ってほしい」
中盤、記者はうっかり針を指に深く刺してしまい、血が止まらなくなるアクシデントが。ギャル船長に負傷を悟られるのは情けないし、気恥ずかしい。ティッシュを巻いて素知らぬ顔で釣りを続けた。
その最中、隣人が特大サイズのカワハギをヒットさせると、ギャル船長は船室から駆け寄り、「写真撮っていい? ブログに載せるから!」と、魚を大きく見せる持ち方までレクチャー。その場を離れる瞬間だった。
「これ、絆創膏! これ、ターボ(ライター)!」
笑顔で記者に手渡してくれた。そう、ギャル船長はすべてを見ていたのだ。負傷したことも、風でたばこに火をつけられず苦戦していたことも。卓越した観察力と気配り力に驚かされた。
あっという間に14時を回り、終了となった。
釣りを終えた後、ギャル船長に話を聞いた。彼女は「楽しく帰ってもらうこと」がモットーだと、こう続けた。
「せっかく高いお金を払って遊びに来てくれているんだから、釣れても釣れなくても『楽しかったね』って笑顔で帰ってほしい。船の上では特に、ポジティブな言葉選びを心掛けています。うちのオヤジはお客さんにガミガミ言うタイプで、私はそれがイヤだった。自分も怒られるとムカつくし(笑)。だから、とにかく褒めるようにしています。すると、お客さんも『もっと頑張ろう』って思えるじゃないですか」
その思いは客にもしっかり伝わっているようだ。帰り支度をする釣り人たちが、ホクホク顔で言う。
「釣果に関係なく、こんなに気持ちよく釣りができるところは他にありませんよ」(30代男性)
「釣り糸が絡まっただけでもすぐに駆け付けてくれるし、気配りとホスピタリティー精神がすごい。もうギャル船長のトリコです」(40代男性)
今回、記者は大漁とはいかなかったものの、次に船釣りをするなら、また「丸十丸」のお世話になりたい。心からそう思えた釣り体験だった。
(取材・文=杉田帆崇/日刊ゲンダイ)