「住みやすい街選びガイド」が明かす"マンションの暗い未来"…資金不足で大規模修繕ができない(田中和彦)
工事費の高騰で長期修繕計画が大幅に狂うケースが多発…どうすれば?
「工事費の高騰です。総会決議を取り、工事内容も決まったのに、長期修繕計画で想定していた工事費を大幅にオーバーし、計画を見直さなければいけない事態が、多くの分譲マンションで起きているのです。想定していた金額ではなく、以前に取得した見積もり金額から大幅に上がったために、工事着工ができないケースもあります」(前出の大手デベロッパー関係者)
そのような場合はどうすれば良いのだろう。これまで、マンション大規模修繕を数多く担当してきた大手建設会社担当者に聞いた。
「まずはなぜ上がったのか、その理由をきちんと工事業者の担当者から説明してもらうことです。担当者の『昨今のご時世で……』なんて言葉だけでは説得力がない。建設に係る物価については何がどのエリアでどの程度上昇しているかについて、WEBサイトで公開されています(表1)。客観的な数字をもとに交渉すれば不当な便乗値上げに巻き込まれる危険も抑えられるでしょう。
次に考えられるのは、複数社に依頼して相見積もりを取ること。管理会社の紹介した工事業者一社からしか見積もりを取っていないのであれば、相見積もりは即効性のある有効な手段です。『管理会社と工事業者がグルではないか?』といったこともよく聞きますが、そのような場合は、不当に高い金額を提示していないまでも、見積もりが甘い、すなわち減額余地のある可能性は高いでしょう」
だからと言って、「闇雲に値下げを迫るのは間違い」と担当者は続ける。
「『金額が変わるのはおかしい』『増額は仕方ないにしても上がりすぎだ』などの言葉を積み重ねたところで金額は下がりません。むしろそんな主張で価格が下がる会社の方がおかしいので、金額が下がった時点で、そういう会社は契約しないことをおすすめします。
また、真摯な対応をしている会社であれば感情的に迫るのは逆効果です。理不尽な要求をしてくる管理組合というレッテルを貼られてしまい、『今後アクシデント等があった際に感情的な対応をされる危険があるので業務を受けるのをやめよう』と離れていくかもしれない。今や管理会社や建設会社が仕事を選ぶ時代になっています。お互いが、常に対等の立場であるということを忘れてはいけません」
相見積もりを取り、安い業者に任せて失敗するケースもある。金額が安くても使用されている部材のグレードなどが違い「安かろう悪かろう」なだけかもしれないからだ。そうならないためには、最初の見積もりを出した業者と同様の仕様書を作り、全く同一の条件提示をすることです。単に見積もって欲しいと頼むと、複数社の見積もり比較ができない。また、他社の見積もり金額を見せることも避けたい。金額を見せることによって、他社がそれよりも金額を下げて仕事を取ろうとするプラスの要素もあるが、本当はもっと安くできるのに見積もりに合わせて少しだけ下げた価格を提示されることもある。