ファーストキャビン小林千花社長「舞台女優→ホテル経営者」華麗なる経歴とホテル業界の展望
小林千花(ファーストキャビン代表取締役社長)
コロナ禍で大きな痛手を負ったホテル業界が、急激な回復を見せている。東京商工リサーチによれば、上場するホテル運営会社13社の客室単価と稼働率は、都心を中心にコロナ禍前とほぼ同水準まで回復。客室単価の上昇は顕著で、9割以上でコロナ禍前を超え、最大の上昇幅は29.6%だった。10日は春節。中国からの訪日観光客で、ホテル業界の景気は一層活気づくことが予想される。華麗な経歴で話題の経営者に展望を聞いた。
■「泊まれる飛行機のようなオンリーワンを確立したい」
──ファーストキャビンのコンセプトは「飛行機のファーストクラス」。
私たちはコンパクトホテルと呼んでいます。飛行機のファーストクラスは移動手段ではありますが、快適な睡眠を得られ、リラックスした時間を過ごすことができます。目的地に降り立ったら、グルメや観光を存分に楽しめる。泊まれる飛行機のようなオンリーワンのホテルでありたいと思っています。
──稼働率は?
東京、京都、大阪、福岡、長崎と計10施設。おかげさまで稼働率はすごく高く、エリアや曜日によっては100%を超える日もあります。平均して80%でしょうか。コロナ以前に戻った印象です。
──客層はインバウンドが中心?
日本人のお客さまが中心で、訪日外国人のお客さまは3割ほど。ホテルの客室単価はどこも上昇しており、ビジネスホテルが値上がりすれば、カプセルホテルも追随せざるを得ない。ビジネスホテルとカプセルホテルの中間に位置する私たちもそうなんですが、クオリティーを下げず、お客さまに満足してもらえる価格設定を心がけています。それもあってか、宿泊費以外にお金をかけたいという方がファーストキャビンに流れてきています。リピーターが多いのも特徴ですね。外国人のお客さまでは長期滞在し、ファーストキャビンを拠点に、日本各地に出かけていくスタイルも見受けられます。円安という後押しがあり、そこに春節休暇も加わり、今後は外国人のお客さまが増えていくのではないかと考えています。
──-別業界からの転身。
宝塚に入るのが夢で、中高合わせて3回試験を受けたんですが、不合格。夢を諦めきれず、大学在学中から芸能プロダクションに所属し、モデルや舞台女優をしていました。ところが、コロナ禍で出演が決まっていた舞台が全て中止になり、プチ挫折ではないですけど、私が本当にしたいことは何かを考えたんです。どうせなら空いた時間を使い、全く違うジャンルでキャリアを形成しようと就職活動を始めました。デリバリーアプリのサービスを提供する会社にバイトで採用され、新事業が立ち上がるタイミングで広報となり、契約社員を経て正社員になりました。