“重傷者”だらけの大相撲で「公傷制度」が復活しない理由
「あれは見苦しい。何とかならないのか」
評論家、識者のみならず、ファンも顔をしかめる。
現在の土俵を見ると、幕内力士の多くはサポーターやテーピングだらけ。逸ノ城も今場所3日目から左肩をテーピングでぐるぐる巻き。両ヒザに爆弾を抱える安美錦のサポーターなどは、プロテクターかギプスかと見まごうほどだ。
これでは大相撲というよりは病院の待合室。こうした「重傷患者」が増えてきたのは、02年の公傷制度廃止以降だ。公傷ならば休場しても番付は下がらないが、現在は休めば休んだだけ番付が下がるので、ケガをじっくり治療するヒマもない。先場所で左ヒザ十字靱帯部分断裂という重傷を負った遠藤が強行出場しているのも、それが理由だ。
当然、力士からは「公傷制度」の復活を望む声が上がっているが、「そう簡単に復活させるわけにもいかない。当時、この制度を利用してズル休みをする力士が後を絶たなかったからね」と、ある角界OBが続ける。
「かつて公傷制度は厳格に適用されていた。『足のケガ? ちゃんと自分で歩いていたじゃないか』と訴えを却下された者もいたほどです。それが平成元年から『公傷は全治2カ月以上のケガのみ』と明確な基準が出るや、診断書を持った力士が相撲協会に殺到。かかりつけの医者に頼んで、軽症でも全治2カ月と書いてもらっていた」