「男気ではなくクールな決断」 高知入団の藤川を権藤博氏評価
全盛期は、背筋がピンと伸びた状態から、軸がブレずにスーッと静かに体重移動し、最後の最後で腕がビュッと出てくる感じだった。力感がないから迫力では劣るが、打者からすれば怖いのはこっちの方だ。タイミングが取りにくく、打ちにいこうと思ったら、もうミートポイントをボールが通り過ぎている感覚だったと思う。だから、ストレートだと分かっていても、空振りしてしまう。このストレートがあるから、決め球のフォークもより威力を増した。
本人も現時点では、古巣の阪神、あるいはNPBの他球団に入ったところで、かつての投球はできないと感じたのだと思う。あれだけの投手だ、自分の現状は誰よりも分かる。メジャー1年目の13年6月にトミー・ジョン手術を受けた、右ヒジの不安もあるはずだ。
今はまだ、高い報酬に見合う働きができない。全盛期に近い力を取り戻すために時間的猶予がいる。そのために、独立リーグを選んだのではないか。NPBに復帰するためのステップである。
今回の藤川は、男気ではなく、クールな決断をした。
(権藤博/野球評論家)