大事とり緊急降板のダル 進化の裏に数々の“プラス思考”
仮に無理をして故障したとしても、だれかが責任を取ってくれるわけではない。ともすれば日本では舞台が甲子園大会だから、チームの勝利がかかっているからと、無理をすることが美徳であるかのように受け取られがちだが、ダルにそういった思考はない。自分の身は自分で守ることが、結果として自分にもチームにとってもプラスになると考える。だからこそ決断は早かったし、じっくりとリハビリに専念することもできたのだ。
プラス思考が強い点も幸いした。リハビリ中に患部を強化したのはもちろん、他のトレーニングにも余念がなかった。「いいこともたくさんある」と公言した通り、時間をかけて腕や体をさらにひと回り太く、大きくした。球速が手術前と比べてアップしたのも、リハビリの時間を有効に使ったからだろう。試合に投げられないマイナスを補うどころかプラスに転じようという意識があればこそ可能だった。
手術を決断した同日のツイッターには、一塁への牽制練習を左手で行ったことも明記し、「右でダメなら左で。マジです」とつぶやいた。右肘が回復しなければ、左投げも視野に入れる。この発想が右手だけでなく左手も鍛え、バランスのよい肉体につながった。
父親がイラン人で、母親は日本人。幼いころは家の中で、英語が飛び交った。思考が“日本人離れ”しているのも当然と言えば当然で、だからこそ復活もさらなる進化もなし得たのだ。