大谷170キロと桐生9秒台 「夢の記録」達成は可能なのか
桐生は「10秒01はもう飽きた。うれしさ50、悔しさ50」と言い、12日付のスポーツ紙は、まるで9秒台は時間の問題とばかりにデカデカと報じていたが、桐生本人も語っているように10秒01は13年4月に出している記録だ。3年経って同タイムを出したに過ぎない。
「日本人にとって、それだけ10秒の壁は厚いのです」と、アスリートの体に詳しいフィジカルトレーナーの平山昌弘氏がこう続ける。
「人の筋線維量は生まれた時から決まっている。日本人は有色人種に比べて、足を引っ張り上げる時に使う腸腰筋が少ないので、そもそも100メートルなどの瞬発系競技には向かないのです。昨年5月に中国の蘇炳添(26)が9秒99を記録したが、大陸系の中国人は筋トレで鍛えられる表層の筋肉(アウターマッスル)ではなく、深層部のインナーマッスルや股関節の使い方がうまい。アテネ五輪110メートルハードルで金メダルを取った劉翔もそうです。桐生選手は9秒台を出せないとは言わないが、まだ走行中に肩や肘に力が入っているように見える。今は山県(亮太=24)選手の方が上半身の力は抜けている。理論上では、体の内側の力を使うことはわかっても簡単にはいかない。桐生選手は3年前に10秒01を出してから、おそらくあらゆる努力をしてきたことでしょう。それでも、100分の1秒さえ記録を更新できないのが現実です」