日本中が歓迎ムード…だからこそ心配な稀勢の里の心と体
「十字架を背負うことになる」――。
そんな例えも大げさではない。
初場所で初優勝した大関稀勢の里(30)は、23日に開かれた横綱審議委員会(横審)で満場一致で横綱に推挙され、25日午前、日本相撲協会の臨時理事会で横綱昇進が決定。直後に都内ホテルで行われた昇進伝達式では「横綱の名に恥じぬよう精進いたします」と述べた。
第66代若乃花以来となる、19年ぶりの日本出身横綱誕生は、スポーツマスコミやテレビのワイドショーが連日大きく報じている。まさに日本列島全体が歓迎ムードだが、「2場所連続優勝」ではなく、「それに準ずる成績」による昇進に異論の声もある。好角家の松野弘氏(東農大客員教授)もその一人だ。
「横審が定める横綱推薦の内規には、『大関で2場所連続優勝した力士を推薦することを原則とする』とある。しかも、優勝した今初場所には2人の横綱と大関1人が欠場していた。だからこそ、原則をきちんとクリアするべきです。63代旭富士から70代日馬富士までは2場所連続優勝で昇進した。71代鶴竜は、これまで在位17場所で優勝2回に休場4回。先日の初場所では10日目終了時点で5敗という横綱としては不名誉な記録もあった。そんな鶴竜ですら、優勝同点・優勝で横綱になっている。なのに稀勢の里は、大関に昇進するときも目安の三役で3場所通算勝ち星が33勝に届かなかった。大関、横綱と、誰もが認める成績での昇格ではないだけに、基準をクリアした横綱とは異なる相当な重圧がかかるはずです」