DeNAラミレス監督に聞いた “助っ人指揮官”の指導哲学
ラミレス監督は指導者経験が決して豊富とはいえない。2014年にBCリーグの群馬ダイヤモンドペガサスで打撃コーチ兼外野手を務め、同年オフに現役引退。その後、同球団のシニアディレクター(SD)と兼任してオリックスと3カ月間の巡回アドバイザー契約を結んだ。外国人選手のサポート役だったが、巡回は平均週1回。チームに帯同する形ではなかった。それでも16年、監督就任1年目で万年Bクラスだった横浜DeNAベイスターズを3位に押し上げた。昨季は3位で、CSではシーズン連覇の広島を破って球団として19年ぶりの日本シリーズに進出。第6戦まで戦い、常勝軍団ソフトバンクを追い詰めた。今季、98年以来のリーグ優勝を目指すラミレス監督に聞いた。
■選手の長所と短所を見分けることが重要
――指揮官として最も大切にしていることは?
「自分の判断ミスで負けてしまったら責任を取るというのはもちろんですが、そこから『何を学んでどう修正して選手の使い方を決めていくべきか』というのを常に考えています。監督として一番大事なのは、『抱えている選手でベストな使い方をしないといけない』ということ。そして選手をうまく起用するために一番重要なのは、選手の長所と短所を見分けることです」
――長所を伸ばす一方で、短所の改善はどうするのか。
「良い例が2つあります。例えば2番打者を誰にするかを考えた場合です。柴田(竜拓)はバントが非常にうまいけど、(足の)スピードがそこまでないから盗塁はできない。彼の長所は、細かい野球、スモールベースボールをやるときに必要な選手です。走れないというところが短所ですが、彼を2番に使うとき、バントが彼の長所を一番生かせるポイントになる。逆に梶谷(隆幸)はあまりバントのサインを出さない。でも足が速くて盗塁はできる。彼を2番にすることで攻撃的な野球になる。短所を直すのではなく長所を生かすという選択です」
――そのために選手に課しているルールや決まりはあるのか。
「私は選手にルールを作るのはあまり好きじゃない。監督が一方的に『こうしなさい』『ああしなさい』ではなく、コミュニケーションを取りながら選手としっかり話し合って伝えれば、選手も自信が湧いてきます。ですから、ルールは選手に対して作りません」
■「選手の使い方は数字が教えてくれる」
――巡回コーチを除いてNPBでの指導者経験がない状態で監督に就任していきなりAクラス入り。結果を出せたのはなぜだと思うか。
「自分自身が選手のときにさかのぼります。私は外国人なので、日本人選手よりも良い成績を残さなければ、日本で長くプレーすることが難しくなる立場。それが分かっていたので、『分析すること』『学ぶこと』に対してすごく時間を割いてきた。おそらく、日本の選手たちよりも、より多くの時間を割いて(相手を)分析してきたと思います。それは監督になっても同じで、しっかり分析をし、準備をすることを怠らない。そのおかげで、ここまでのキャリアを残せたと思います」
――今後もデータ野球を貫いていくと。
「私はまだ学んでいる最中。歴史に残る監督になるには、まだまだこれから時間をかけて結果を残さないといけない。そのために、人よりもより多く勉強して分析する準備の時間を大切にしています。自分自身でも分析と準備というのは非常にユニークだと思う。ただ、私はそれで成功してきたので、自分自身を信じている。いろんな人に『こうした方がいいんじゃない』と言われることもあるけど、それを全部聞いてしまったら、うまくいかないと思うんです。いい意味で私は頑固だと思う。外国人選手で、初めて日本のプロ野球で2000安打を達成しましたが、それは簡単なことではない。もしいろんな意見を取り入れていたら、これも達成できなかったと思うので、自分の分析や準備をすごく信じている。監督としても同じように結果を残そうと思っています」
――分析とは具体的にどんなことを。
「やはり数字の部分になります。自分のチームや相手チームのデータ、対戦打率や防御率はもちろんチェックします。ピッチャーAがキャッチャーAと組んだときの防御率はどうか、など細かい数字も大事だと思うんですけど、そこに選手の長所や短所を加味しながらやっています。一番重要なのは『数字は嘘をつかない』ということ。選手の起用方法は数字が教えてくれるわけです。そこで得られたヒントを見逃さず、しっかりとチェックすれば、おのずと結果は出る。毎日10ページ以上の資料をチェックしています」