エンゼルス大谷翔平に「新人王」をもたらした“米国人気質”

公開日: 更新日:

 また、米国では新しいものを追い求めるとともに、過去もひときわ尊重する。4大プロスポーツだけでなく、学生スポーツでも多くの競技で「殿堂」を設けているのは、往年の名選手や優れた指導者の事績を顕彰し、後世に伝えようとする意欲の表れだし、選出された人物はサインを求められると色紙に「Hall of Famer」と書き添えて、“名誉の殿堂”の一員であることを誇りに思っている。

 大谷の場合には、「ベーブ・ルース以来の」と形容されたように、誰もが知る野球の象徴であるベーブ・ルースが引き合いに出されたし、1920年に当時の大リーグ記録である年間257安打を放ったジョージ・シスラーが投手としても活動していた記憶を蘇らせた。

 その意味で、大谷は歴史を好む米国の人々の価値に合う、「現在と過去をつなぐ選手」でもあったのだ。

 そして、最後の重要な点は、人々の野球に対する考えを変えさせたということだ。

 かつて満塁でも「本塁打を打たれるよりは」と敬遠されたバリー・ボンズは「野球のあり方を変えた」と言われたし、「内野ゴロでアウト」と思われた打球を安打にしたイチローは「野球の見方を変えた」と称された。それとともに、「投手と打者は別」というそれまでの常識を打ち破った大谷は「野球の可能性を変えた」選手であり、米国人の好む革新性を体現していたのだ。

 このように考えれば、「ヤンキース・デュオ」ではなく、大谷が新人王となったのが当然であったことが分かると言えるだろう。

(アメリカ野球愛好会代表、法大講師・鈴村裕輔)

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 2

    “氷河期世代”安住紳一郎アナはなぜ炎上を阻止できず? Nキャス「氷河期特集」識者の笑顔に非難の声も

  3. 3

    不謹慎だが…4番の金本知憲さんの本塁打を素直に喜べなかった。気持ちが切れてしまうのだ

  4. 4

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  5. 5

    大阪万博の「跡地利用」基本計画は“横文字てんこ盛り”で意味不明…それより赤字対策が先ちゃうか?

  1. 6

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  2. 7

    大谷「二刀流」あと1年での“強制終了”に現実味…圧巻パフォーマンスの代償、2年連続5度目の手術

  3. 8

    国民民主党は“用済み”寸前…石破首相が高校授業料無償化めぐる維新の要求に「満額回答」で大ピンチ

  4. 9

    野村監督に「不平不満を持っているようにしか見えない」と問い詰められて…

  5. 10

    「今岡、お前か?」 マル秘の “ノムラの考え” が流出すると犯人だと疑われたが…