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山田隆道作家

1976年、大阪生まれ。早大卒。「虎がにじんだ夕暮れ」などの小説を執筆する他、プロ野球ファンが高じて「粘着!プロ野球むしかえしニュース」などの野球関連本も多数上梓。各種スポーツ番組のコメンテーターとしても活躍中。

ブログ炎上に思う…イチロー引退に水を差した真犯人は誰か

公開日: 更新日:

 だから、後日に大のプロ野球ファンで知られるタレントのダンカン氏が自身のブログで「(イチローの引退劇は)とんだ茶番、客寄せパンダ」と批判した、その理屈はよくわかる。特に中継した日本テレビの演出は昨今の地上波テレビでおなじみの感動ポルノ的なものであったし、名だたるメジャーリーガーの真剣なプレーを差し置いて「イチロー、イチロー」とあおり立てる放送はMLB公式戦の重厚さにふさわしいものではなく、まさに日本のファンのためのイチロー引退興行という様相だった。そりゃあ、批判するのも当然だ。私はそういう不愉快な瑕疵を、イチローから放たれていた衰えの色気、その美に免じて許容しただけだ。

 だから、先述のブログが炎上したという事実が気持ち悪くてしょうがない。炎上の理由は、要するに「スーパースターの感動的な引退に水を差すな、批判するな」ということらしいが、なんだろう、その思考停止は。人間は思考する生き物であるはずなのに、一時の感動に支配されて異なる意見を攻撃するとは軽蔑に値する。いくら感動したとしても、思考と批評を封殺してはならない。

 おまけにダンカン氏は後日謝罪したという。これもまた暗澹たる気持ちになった。イチローの感動的な引退劇にもっとも水を差したのは、この炎上に加担した人たちだ。 

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