著者のコラム一覧
武田薫スポーツライター

1950年、宮城県仙台市出身。74年に報知新聞社に入社し、野球、陸上、テニスを担当、85年からフリー。著書に「オリンピック全大会」「サーブ&ボレーはなぜ消えたのか」「マラソンと日本人」など。

錦織圭は相手を勢い付ける“栄養剤” 脱却に必要なものとは

公開日: 更新日:

 猛者ぞろいのツアーでは、錦織の抜群のショットコントロール、出球の読めないバックハンドは伝説的で、フルセットの勝率ナンバーワンの粘りも脅威の的。いま大挙押し寄せている若手にとって、早いラウンドでの錦織は格好のターゲットであり、試金石、登竜門なのだ。ラウンドが進んで対戦する古豪には、錦織のスタミナ切れが見て取れる――これがいま我々のエースが置かれている、どうにもならない裏の柿の木、四面楚歌の状況というわけだ。

 最近のプレーは精彩がないといわれる。ミスが目立ち、連続でゲームを失う場面が多いのは確かなのだが、それは相対的な話で、相手の気迫が勝っているとも言える。2年前にネクストジェン(次世代)として登場したズベレフ、ハチャノフ、チョリッチ(いずれも22歳)、メドベージェフ(23歳)に加え、昨年はシャポバロフ、チチパス(ともに20歳)、今年は18歳のフェリックス・オジェ・アリアシムらが次々に出現……20位以内で揉みあう若い狼の勢いを止めるとすれば、技術では及ばず、やはりガツンとした気迫になる。

 白鵬並みに張り手をかまし、大迫傑並みに協会に喧嘩を売るパワーこそが流れを変えるだろう。才能豊かで場慣れした日常から、新たなエネルギーを噴き出すことはないのだ。試合数が足りないならダブルスに出るだけでなく、格下のチャレンジャーに回るほどの強い気持ちが欲しい。この際、結婚するくらいダイナミックな変化……ぼんくらスタッフに頼らず、自ら変えなければ、クリスマスキャロルが聞こえる頃にはもう30歳だ。

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