著者のコラム一覧
岡邦行ルポライター

1949年、福島県南相馬市生まれ。ルポライター。第3回報知ドキュメント大賞受賞。著書に「伊勢湾台風―水害前線の村」など。3・11後は出身地・南相馬中心に原発禍の実態を取材し続けている。近著に「南相馬少年野球団」「大島鎌吉の東京オリンピック」

体操団体金と種目別ゆか銅を獲得した「ソニーマン」の苦悩

公開日: 更新日:

1968年メキシコ五輪・男子体操代表 加藤武司さん(上)

 1964年の東京オリンピックで日本は、史上最多の16個の金メダルを獲得。そのうち男子体操は5個を手中にし、“体操ニッポン”を内外にアピールした。

 しかし、悔し涙で仲間の演技を見守る男がいた。早稲田大4年の加藤武司で、無念にも補欠選手だったからだ。ただ、それがその後の励みとなる。

 翌年春にソニーに入社し、3年後のメキシコオリンピックに出場。個人総合5位入賞を果たし、団体総合優勝に貢献する一方、種目別のゆか運動でも銅メダルを獲得した。当然、4年後のミュンヘンオリンピックでの活躍も期待された。

■「嘱託社員」と「正社員」の差

 ところが、社会人オリンピアンの加藤には大いなる悩みがあった。「世界のソニー」に入社しても一般社員とは違った。早大卒業とはいえ、2部(夜間課程)のために現役選手期間中は「嘱託社員」扱い。さらに、その期間は退職金に加算されないという条件も付いていたのだ。

 これには悲観し、同じ体操競技オリンピアンの妻・宏子(東京五輪団体総合銅)を前に言った。

「ぼくはソニーの看板を背負って頑張っても、本当のソニーマンではないんだな。一流企業ほど厳しいよ……」

 加藤は当初、大学に残って体操部のコーチをしながらメキシコオリンピックを目指し、ゆくゆくは大学の教員になれればと思っていた。しかし、体育関係の教員になるには体育専門学科を卒業していなければならず、その道は閉ざされていた。彼は商学部出身だった。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    俳優・山口馬木也さん「藤田まことさんは『飲め、飲め』と息子のようにかわいがってくれた」

  2. 2

    前代未聞の壮絶不倫・当事者のひとりがまたも“謎の欠場”…関係者が語った「心配な変化」とは???

  3. 3

    テレ朝ナスD“経費横領&パワハラ処分”に「見せしめ」の声も…家族団らん投稿の美人料理家妻に同情集まる

  4. 4

    自信なくされたら困るから? 巨人・田中将大がカブス戦登板「緊急回避」の裏側

  5. 5

    東原亜希の“黒帯バスローブ密会”乗り越えた「許す力」は佐々木希以上? 経済的自立も目指す強心臓とたくましさ

  1. 6

    料理研究家の森崎友紀 “本業”専念も恋愛は「年も年なので」

  2. 7

    兵庫県パワハラ知事に残った選択肢は「議会解散」のみ…多数派工作で延命図るか?味方は“情報漏洩3人組”のみ

  3. 8

    あす旧統一教会に解散命令か? N国党に急接近の不気味、タダでは転ばない悪あがき

  4. 9

    巨人の“アキレス腱”は絶対的セットアッパーが使えないこと…新助っ人キャベッジで外国人枠「満員」

  5. 10

    佐々木希が「芸能人格付けチェック」で"地雷キャラ"といじられ…夫・渡部建を捨てないもう1つの理由