部活動が再開されると和田監督は部員95人と面談を行った
6月1日。授業が再開され、拓大紅陵野球部も3カ月ぶりに野球ができるようになった。活動が再開されると和田孝志監督(49)はまず、95人の選手全員と個々に面談を行った。
■家庭環境の変化
「高校野球は基本、休みといえば正月の1週間程度です。それが今回は3カ月。突然の休校だったので、学校側も課題などは出せず、しかも部活動もできない。本当に何もない時間は、子供たちにとってつらかったと思います」
勉強にしても運動にしても、目標がなければ身が入らないし、身にもならない。いきなり実家に帰され、具体的な指示もないまま3カ月間、自粛生活を余儀なくされた野球部員たちはまさにそうだった。センバツは中止、夏の甲子園もどうなるか分からない。確固たる目標はないも同然だ。練習再開後、和田監督が真っ先に取り組んだのは、そんな部員たちの心のケアだった。
面談では主に家庭環境について聞いた。和田監督は「事情を理解していても、親とすれば子供が家にいれば何か言いたくなってしまうものですから」と話す。親とケンカはしていないか、何か家庭で変化はあったか、精神的に参っていないか、コロナ禍で職を失った親御さんはいないか……。そうしたことを部員全員に聞いた。もし、心が病んだ子がいればケアをする必要がある。親が失職しようものなら野球どころではない。