楽天・黒川内野手 “敵に塩を送った”男のバックグラウンド
黒川史陽(楽天 内野手1年目・19歳)
主砲の浅村をして「19歳とは思えない。芯が一本、ドンとある」と言わしめた。デビュー戦となった4日のオリックス戦に「7番・二塁」で先発出場すると二回、無死満塁の好機で迎えた初打席のファーストスイングで同点犠飛を右翼へ打ち上げた。高卒新人の初打席初打点は楽天初。一振りで球団史に名を刻んだ。
母の枝里子さんが幼少期を振り返る。
「物心がついた時から野球に対する情熱は凄まじかった。幼稚園の頃は文字も全然書けないのに、好きな野球選手の名前を漢字で覚えると、自分の理想のオーダーをつくって野球ごっこをしていました。部屋で投げて、打って、捕るの3役をひとりで熱演する姿を見て、『この子は大丈夫なのかな』と心配したほどです(笑い)」
二十数年前、ヤマハ音楽教室で講師を務め、子供たちにエレクトーンやミュージカルを教えていた枝里子さんと、同志社大で野球部に所属していた洋行さんが出会い、後に結婚。3人の元気な男児を授かった。
活発な性格に加えて負けん気が強かった黒川は、3歳上の兄や2歳下の弟との喧嘩は日常茶飯事。枝里子さんは、「小学生の頃までは『俺に付いてこい!』という少しジャイアンのようなところもあり、体も大きかったので周りの人から誤解を受けやすかった。怖がられたり、本人がちょっと押したつもりでも相手の子は受け取り方が違い、先生から、私が呼び出しを受けたこともあります。ですが、昔から正義感が強く、ズルいことも嫌いで優しい子です」と、さらにこう続ける。