アメリカ出身選手の笑顔は上っ面だけ 実力で心を開かせる
■実践で好投した途端…
スプリングトレーニング、つまり日本のオープン戦にあたる実戦マウンドで好投したところ、よそよそしかった彼らの態度が一変。試合後は僕を囲んでわいわい盛り上がり、祝福してくれた。同じ投手でこの年、サイ・ヤング賞を獲得したクリフ・リーも、実戦で好投してようやく笑顔で話し掛けてきたくらいです。試合前と後で百八十度違う彼らの態度に困惑したものの、インディアンスのファミリーの一員になれたといううれしさが勝りました。
■フリチンで
インディアンスでは一度、ファミリーの一員と認められた者同士の結束が固かった。ホームゲームで勝つと、試合後はビールで乾杯するのが恒例となっていました。
車を運転して帰る選手もいるので、飲むといってもほんの少し。唇を湿らせる程度の選手も中にはいましたが、ビールによる乾杯はナイン全員が参加する勝利の儀式でした。
あるとき、試合で活躍できなかった選手が儀式を無視、ひとりでシャワーを浴びていたことがありました。勝利に貢献できなかったことでふてくされていたんですね。気持ちはわかりますけど、ナインはそれを許さなかった。別の選手がシャワー室に踏み入ると、しばし口論に。するとふてくされていた選手は丸裸、下のものをブラブラさせたまま引きずり出され、ビールの乾杯に参加させられました。
個人主義のようなメジャーですが、その実は何よりも結束を重視し、和を乱す者は許さない。メジャーの文化というかしきたりを表すエピソードのひとつです。 (つづく)