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六川亨サッカージャーナリスト

1957年、東京都板橋区出まれ。法政大卒。月刊サッカーダイジェストの記者を振り出しに隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任。01年にサカダイを離れ、CALCIO2002の編集長を兼務しながら浦和レッズマガジンなど数誌を創刊。W杯、EURO、南米選手権、五輪などを精力的に取材。10年3月にフリーのサッカージャーナリストに。携帯サイト「超ワールドサッカー」でメルマガやコラムを長年執筆。主な著書に「Jリーグ・レジェンド」シリーズ、「Jリーグ・スーパーゴールズ」、「サッカー戦術ルネッサンス」、「ストライカー特別講座」(東邦出版)など。

日本代表はUEFA所属でW杯出場を目指したらどうか?

公開日: 更新日:

 オランダ遠征の第2戦(13日)でコートジボワールと対戦した森保ジャパンは、アディショナルタイムに植田直通(セルクル・ブリュージュ)の決めた代表初ゴールで1-0の勝利を収めた。期待された久保建英(ビジャレアル)はスタメン出場を果たしたものの、プレーに精彩を欠いて後半26分に南野拓実(リバプール)と交代でベンチに退いた。

 日本は試合開始直後から積極的に攻めに出た。前半2分、右SB室屋成(ハノーファー)のフィードから、FW鈴木武蔵(ベールスホット)が右サイド深くに持ち込んでマイナスにクロス。これを久保がワンタッチで左足のインサイドで合わせたが、ボールはクロスバーを大きく越えた。

 しかし、日本はその後も室屋と右MF伊東純也(ヘンク)が、積極果敢に攻撃を仕掛けていった。

 これまで日本代表の右サイドは、酒井宏樹(マルセイユ)と堂安律(ビーレフェルト)の定位置といった感が強く、9日の第1戦カメルーン戦も2人がスタメン出場を果たした。そんな彼らに室屋と伊東は、挑戦状を叩き付けるかのようにアグレッシブに突進し、サイドアタックを敢行した。

■室屋はあまり深く考えないタイプ

 コートジボワール戦の2日前のことである。今遠征中、日替わりで代表選手はズームによる取材に応じているが、室屋に「久保と一緒にプレーするとしたら、どんなことに気を付けるか」と聞いた。すると室屋は「タケ(久保)は何でもできるので自由にプレーさせてあげること。(FC)東京で一緒にやってきたけど、自由にプレーさせるには、やりやすいようサポートすることだと思います」と答えた。

 これに少なからず違和感を覚えてしまった。これまでFC東京を取材する機会が多い中、いつもの室屋はあまり深く考えずに(と勝手に思っているだけだが)ズバッとモノを言うタイプだからだ。

 彼がFC東京に在籍していた昨シーズンに「奥さんや子供もいるんだから、ひと口に海外移籍と言っても行きたい国とかありますよね」と水を向けても、「行けるならどこでもいいっすよ」と即答するタイプだった。それが今回、少し考えながら間を置いてから返答した。これに違和感の覚えたものである。

 もしかしてスタメンを聞いて、右MFは久保ではなくて伊東だったこともあり、室屋は答える際に間が空いたのかも知れないがーー。ちなみに伊東とプレーすることに関しては、以前「足が速いので任せることにしています」と話していた。

 森保ジャパンの右サイドの競争激化と較べ、そもそも左サイドの懸案事項は、長友佑都(マルセイユ)の後継者探しだった。

 今オランダ遠征の長友は、体調不良を理由に直前になって代表合流を辞退したために9日のカメルーン戦では安西幸輝(ポルティモネンセ)が、コートジボワール戦では中山雄太(ズヴォレ)が代役を務めたが、守備での安定感という点で評価を高めたのは中山だったと言えよう。

 コートジボワールは、カメルーンのような洗練されたパスサッカーではなく、アフリカ勢らしい<個の力>で攻めてくるチームだった。クウェートでプレーしているFWサイード以外は、全員が欧州のクラブに所属しているので日本と同様、移動距離も少ないのでコンディションはいい。手抜きもせず、終盤になっても運動量は落ちなかった。

 左右両サイドからクロスを上げたり、ドリブル突破を図ったりしながらサイドを崩そうとした。これに対し、日本は空中戦では必ず体を寄せてフリーでヘディングシュートを打たせないようにしていたし、ドリブル突破に対してもDF陣たちはフェイントに引っ掛かることなく、粘り強い対応でクロスをブロックしていた。

■アフリカ勢との2試合を完封した日本選手

 カメルーン戦も含め、日本選手たちはスタミナ切れを起こすことなく、アフリカ勢との2試合を完封した。

「僕の記憶にない」とキャプテンのDF吉田麻也(サンプドリア)は驚いていた。改めて言うまでもなく、時差と長距離移動のない欧州での試合開催ということで、選手のコンディションが良かったことが上げられる。

 もう一点。たとえばカメルーン戦の後、やはり吉田が「宏樹(酒井)なんかはアフリカの選手にやり慣れているなと感じた」と振り返っていたように、選手の経験値が上がっていることが指摘できる(元々フランスリーグにはアフリカ系の選手が多く、かつてサンテティエンヌなどでプレーした現・横浜FCのMF松井大輔も、アフリカ系の選手を苦にしなかった)。

 ブラジルW杯でザッケローニ監督率いる日本代表がコートジボワールに敗れ、長友でさえも屈強なMFヤヤ・トゥーレとのマッチアップに「体のぶつけ合いで体が痛くなった」と試合後にスタッフにこぼしたほど。当時のコートジボワールにはFWのドログバ、カルーらを擁した歴代最強チームだった。鋼のような筋肉で武装していた彼らはいなくなったが、それでも日本選手の<アフリカ勢との経験値がアップしている>ことは間違いないだろう。

 森保ジャパンは11月にも、今度はオーストリアでメキシコと対戦する予定となっている。

 小柄なでもフィジカルが強く、テクニックがあり、何よりも試合巧者でズル賢い。これがメキシコの伝統のである。チームを率いるマルティーノ監督は、2010年の南アW杯でパラグアイで采配を揮い、決勝トーナメント1回戦で日本をPK戦の末に下した指揮官として知られている。

 欧州開催なので日本のファンは、生観戦できないので辛いところだが、対戦相手は確実にグレードアップしている。

 いっそのこと……日本は、W杯出場がほぼ確実視されているAFC(アジアサッカー連盟)から脱退し、UEFA(ヨーロッパサッカー連盟)に加盟したらいかがだろうか。

 もちろんW杯出場に関しては<狭き門>になるが、予選でのワクワク感は確実に増すし、欧州選手権(EURO)や欧州ネイションズリーグ(UNL)に参加の可能性も出てくる。欧州トップレベルの経験値が増すことが日本代表のレベルアップに繋がることは、もちろん言をまたない。

【連載】六川亨のフットボール縦横無尽

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