阪神再建のテコ入れ?腰砕けに終わりそうな「GM復活」計画
「親会社でGM制を復活させたらどうかという意見が出ているようです」
阪神OBがこう言う。
矢野燿大監督(51)の来季続投が決定した阪神でこのオフ、フロント人事に大きな動きがあるかもしれない。
3月の藤浪らのコロナ合コンに始まり、9月には福留ら選手による内規違反の外食が発覚。チームの規律が乱れた責任を取り、揚塩球団社長が11月限りで退任することになった。これにより、12月1日付で藤原崇起オーナー(68)が球団社長を兼務することが内定しているが、親会社の周辺では、「今季は2位に浮上したものの、巨人に7・5ゲームもの大差を付けられた。巨人との組織力の差は明らか。これを機にGMを復活させ、率先して編成やチーム運営の強化をすべきだ」との声があるという。
■編成強化は必要不可欠
前出のOBが続ける。
「阪神では2012年9月、一軍監督などを歴任した中村勝広氏(故人)が球団初のGMに就任。15年9月に氏の死去に伴い、廃止された。阪神は近年、40歳前後のベテランや助っ人への依存度が高く、若手、中堅が伸び悩んでいる。今季限りで藤川、福留、能見の大ベテラン3人が引退、退団しますが、長年の懸案事項になっている指導力不足は解消されそうにない。チーム失策数は18年から3年連続で12球団ワースト。首脳陣のテコ入れは不可欠なのに、来季のコーチ人事は球団内部の人間を配置転換するだけにとどまった。今後、こうした事態を招かないためにも、幅広い人脈を持つなどマネジメント能力に長けた『編成の目利き』を置いてチームを立て直すべきというわけです」
現在、12球団でGM制度を導入しているのはソフトバンク(三笠GM=取締役)、楽天(石井GM兼監督=取締役)など。楽天の石井GM兼監督、西武の渡辺GMは選手出身だが、ソフトバンクの三笠GM、日本ハムの吉村GMは選手経験がない。
「阪神では02~03年、当時の星野監督が事実上のGM兼任監督として補強に関しても辣腕をふるった。最近では中日の森前監督がドラフトや助っ人補強で手腕を発揮し、今季、8年ぶりのAクラス入りを果たす土台をつくったし、巨人の原監督も全権監督としてリーグ連覇を達成した。編成面においても影響力を発揮できる監督に任せるか、大リーグのGMや、常勝チームを構築するソフトバンクの三笠GMのように、ビジネス界の優秀な人物が編成トップに就かない限り、簡単に勝てない時代になったといえます」(前出のOB)
「金庫のカギは持っていない」
とはいえ、阪神がGMを復活させようにも、一筋縄ではいかないという声がある。在阪の放送関係者は、「候補としては、12~15年に監督を務めた和田豊球団本部付テクニカルアドバイザー(TA)が挙がりそうですが……」と、こう続ける。
「和田TAはフロントとして、ドラフト候補の視察などに関わっている。調整役としては長けているでしょうけど、かつての星野監督のように人脈を駆使した政治力があるかどうかは不透明です。OBでは他に、阪神レジェンドテラーの掛布雅之氏を推す声が上がっています。掛布さんなら実績、知名度、人脈とも申し分ない。ファンの理解も得られる。04~08年に監督を務めた岡田彰布さんもいますが、阪神は伝統的に電鉄本社から出向した取締役兼球団本部長が編成のトップに就く。いまの谷本修副社長がこのポジションに当たります。中村GMはかつて、『私は金庫のカギは持ち合わせていない』と話したように、監督やFA補強など、大きな人事の決定権を持っているのはオーナーであり、お金を動かせるのは取締役である球団社長、球団本部長まで。GMとは名ばかりで、成績不振や補強失敗の際の『風よけ』に使われるだけでなく、ファンやメディア向けの『アピール』『アリバイづくり』でしかない、ともっぱらでした。今回、GMを復活させたとしても、同じことになるでしょう」
■フロントの反発必至
このことは、阪神のフロントにはびこる「ぬるま湯体質」が影響している。前出OBが言う。
「腕利きの人物を呼んで編成権を与え、お金をも動かせるようにしようものなら、既得権益を守りたいフロントが猛反発し、波紋を呼ぶのは必至です。岡田さんが監督に復帰できないのは、監督時代に編成を巡ってたびたびフロントと衝突したことで、いまだに親会社や球団内にアレルギーを持つ人間がいるからだといいます。そもそも阪神の幹部たちは、球団への出向中にとにかく波風を立てたくない。フロントの古株たちの言い分を受け入れていれば揉め事は起きないため、ナアナアで済ませる傾向がありますから」
フロントがこんな体たらくでは、再建への道のりは遠いというしかない……。