イチローの取材は“つまらない”と思われたらおしまいだった
「イチローさん、日本とアメリカのオールスターはどう違います?」
イチローはその評論家に顔を向けるとこう言った。
「○○さん、(日本で)オールスターに出たことあるんですか?」
「エッ、ええ、一度だけ」
「そうですか。あるんですか」
会見場は気まずい雰囲気に包まれた。日米で球宴に計17回出場しているイチローにとっては、聞き飽きた質問だったかもしれない。とはいえ、相手はプロ球界の先輩である。出場してないから、球宴のことを質問できないというものでもない。それなりの対応があるのではないかと思った。
イチローは学生野球の指導に必要な資格回復の認定を受け、12月2日から3日間、和歌山県の智弁和歌山高の野球部を指導した。イチロー指導の報を聞き、「一度だけ」と答えた評論家のバツの悪そうな顔を思い出す。
▽富岡二郎=スポーツジャーナリスト。1949年生まれ。東京都出身。雑誌記者を経て新聞社でスポーツ、特にプロ野球を担当。