<前>無理のしわ寄せで勤務シフトや安全点検が狂いっぱなし
大晦日1日限りの終夜運転とはワケが違う。これだけの規模と期間で鉄道が長時間走った経験はどこの会社もない。鉄道関係者は半年以上勤務シフトを狂わせて対処することになる。売店従業員や清掃作業員なども同様だ。トラブルになるかはやってみないと分からない。
事は人間だけで済まない。電車も線路も一定期間内の安全点検が欠かせないが、オリンピック期間中はそれができない。事は安全にかかわるから後回しにはできない。前倒しだ。こうした前倒し点検はとっくに始まっていて、要員は駆り出されている。つまりオリンピック期間の無理のしわ寄せは、前にも後にも長く続くのだ。
■特別輸送出費と乗客減のダブルパンチ
観客を入れないのなら深夜の終電延長や増発はやらなくていいのか。それすら分からない中、ひたすら出費がかさみ、首都圏鉄道はコロナでの乗客減とのダブルパンチだ。この出費は、最後はオリンピックに縁のない乗客の運賃負担上昇やサービス低下で埋め合わせるしかない。
もう輸送の世界ではオリンピックは始まっている。でも今撤退すれば、まだ大出血を止めることはできるはずだ。 =つづく
(鉄道ジャーナリスト・石山政男)