大谷翔平メジャー4年目の「意外な食生活」量産する本塁打と剛速球の源にある“おこだわり”
「彼は違う次元に向かっているようだ。素晴らしかった」
こう言ったのはヤンキースのアーロン・ブーン監督。「彼」とは日本時間30日のヤンキース戦でリーグトップの27、28号の2打席連続本塁打を放った大谷翔平(26=エンゼルス)のことだ。
本拠地のヤンキースタジアムで連日の3発。自軍にメジャーを代表するスラッガーたちを従える敵将が衝撃を受け、舌を巻いた。
■コスタメサの焼き肉
打つだけでなく、マウンドに上がれば160キロ超の剛速球を投げる。ケタ違いのパワーの源は何か、特別なものでも食べているんじゃないか、気になるところだが、「食事は可能な限り球場のクラブハウスで済ませているし、時間がないときや遠征先では持参したタッパーに料理を詰めて持って帰ることが多い。エンゼルスタジアムから車で10分ほどの場所にある一軒家にひとり暮らし。管理栄養士にキャンプ中の90食分の食事を冷蔵庫や冷凍庫に作り置いてもらって、自炊の方法を習ったことはある。鍋でご飯を炊いたり、ハンバーグも作れるようになったといいますけど、手の込んだ料理をするわけじゃない。たまにアナハイムの隣町のコスタメサで焼き肉を食べる程度で、特別にパワーやスタミナがつきそうなものを口にしているという話は聞いたことがありません」とは現地特派員。
■欲は出てこない
かつて日刊ゲンダイのインタビューで食に関する質問をしたときもこんな答えが返ってきた。
「そんなにお酒を飲みたいとは思いません。(故郷の岩手に)帰ったときには一滴も飲んでいません。好きじゃない? ビールの1杯目くらいはおいしいと思いますけど。(体重を)増量しているときは、あまり飲まないようにしていますし、そこを崩してまで飲みたいとは思いません。(自分で考えていることを犠牲にしたり、ペースを乱したくないのかという質問に)乱されるのも嫌いですし、そこまでして好きなものを食べたいとも思いません。そういう感じで食事はしていませんので。そういう欲みたいなものも出てこないのかなと思う」
例えばイチローは現役時代、米国でも日本にいたときと同じような食事をとることにこだわった。毎朝、女房の作ったカレーを食べたし、ときには日本で行きつけだった店からわざわざ肉を取り寄せたほど。松井秀喜にしても食い物にはうるさかった。体のことを考えながら、好きな物を食べることは楽しみのひとつだった。
大谷はしかし、彼らのような食に対するこだわりはない。いや、あるのかもしれないが、あくまでもパワーをつけるためのものであって、どうしても何かを食べたいという欲自体、ないようなのだ。
体をつくる手段
「その代わり、速い球を投げて、打球を飛ばすためには体のどの部分をどう鍛え、どういった食事を取るのがよいかという知識を得ることには貪欲です。食事に関しても管理栄養士を通じてかなり勉強している。つまり大谷にとっての食事は、投げて打ってバテにくい体をつくるための手段なのです。なのでクラブハウスでピックアップしているのも、そういった体をつくるうえで有効な食材なのでしょう」(前出の特派員)
「週刊新潮」(5月6、13日号)によれば、「大谷選手は昨オフ、自分に合っている食材、合っていない食材がわかる血液検査を受けた」という。「その結果、卵が合ってないことが判明し、毎朝自ら料理して食べていたオムレツをやめた」そうだ。
大谷はもともと、食が細い。中学時代は毎日牛乳を1リットル飲んだが、茶碗1杯の白飯を食べればそれで十分だった。岩手の花巻東高野球部には「食事トレーニング」があった。ノルマは1日どんぶり飯10杯。練習試合になると仕出し屋の弁当が出て、余ると投手が食べることになっていたが、食べ切れず、かといって捨てるわけにもいかず、寮の机の引き出しにしまい込んでカビだらけにしたこともあった。大谷にとって食事は、高校時代同様、トレーニングの一環なのかもしれない。
■3分の2回7失点KO
日本時間1日のヤンキース戦は「1番・投手」のリアル二刀流で出場したが、大乱調。押し出しを含む5四死球と制球が定まらず3分の2回を2安打7失点でKOされ、そのままベンチに下がった。エンゼルスは最終回、一挙7得点で11-8の大逆転、大谷に黒星はつかなかった。