侍ジャパンの五輪金メダルへこれだけの「落とし穴」が…2人の評論家か指摘
東京五輪に出場する侍ジャパンは19日、仙台市内の楽天生命パークで強化合宿をスタートさせたが、ソフトバンクの柳田悠岐外野手(32)が、いきなり右脇腹に違和感を訴えた。
出場した17日のオールスター第2戦で右脇腹に違和感を覚え、18日に仙台市内の病院でMRIを受診していた。第1戦に全パの「1番・中堅」で先発出場し、六回までプレー。翌17日の第2戦では試合前のホームランダービーに出て、1回戦で全セの村上(ヤクルト)と対戦。5本のサク越えを放ったものの、6本の村上に敗れた。試合には八回の守備から途中出場していた。骨に異常はなかったものの、この日は別メニューで調整した。
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ロッテ、西武で活躍し、2000安打をマークした評論家の山崎裕之氏がこう指摘する。
「柳田は前にも同じ箇所を痛めて離脱している(2017年9月)。同じところを何度も故障するのだから、振り過ぎという体のサイン。私も脇腹を痛めたことがありますが、咳やくしゃみをするだけで痛い。問題はここを痛めると長引くこと。治った後もスイングの際に怖さが残るから厄介なんです」
巨人OBで元投手コーチの高橋善正氏(評論家)は「球宴を主催したNPBは配慮できなかったのか」とこう続ける。
「コロナ禍で昨年は開催できなかったので、今年はどうしてもやりたかったのでしょう。それにしても、直後に五輪があり、ほとんどの代表メンバーが球宴に招集されることは予想できたわけで、やるにしても1試合で良かったのではないか。本塁打競争で痛めたとみられるが、エンゼルスの大谷が出場した一日がかりのメジャーリーグのホームランダービーを見た後では、いかにも見劣りしたし、参加した8人中、柳田、山田(ヤクルト)、吉田正(オリックス)、村上が日本代表に選ばれている。そもそも打撃が崩れる本塁打競争なんてやる必要があったのか。甚だ疑問です」
当初練習が予定されていた22日は休みに変更された。柳田が故障する前に決まっていたことだが、かねて指摘される過密日程を考慮してのものだろう。
■田中将大でいいのか?
他にも気になる選手がいる。新型コロナウイルス感染防止のためのワクチン接種による副反応で、球宴を欠場していた楽天・田中将大(32)だ。この日は千賀(ソフトバンク)とキャッチボールをするなど元気な姿を見せた。今季4勝5敗、防御率2.86。08年の北京五輪の際はメンバー最年少、今回は大野(中日)、坂本(巨人)らと共に最年長となる。「体調は大丈夫。荷物運びでもチームのためにできることがあれば何でもしたい」と決意表明した右腕は、2戦目のメキシコ戦(31日)先発の可能性がある。勝ち進めば、中6日で8月7日の決勝戦の先発が濃厚だ。
前出の高橋氏が言う。
「北京五輪やWBC、メジャーなどの経験を買われているのでしょう。ワクチンの副反応は治まると思うが、田中でいいのかという疑問は残ります。防御率は2点台で悪くはないが、突出して良くもない。かつて24勝0敗だった頃(13年)と比べると、明らかに力は落ちている。2戦目の先発を争っているとされる森下暢仁(23=広島)の方が勢いを感じます」
「一番重圧がかかっているは稲葉監督」
侍ジャパンの稲葉篤紀監督(48)は今回、19年11月に行われたプレミア12のメンバーを中心に選んだとしている。つまり、今季の調子ではなく、過去の実績や名前から大部分のメンバーを決めたということだ。
例えばパ・リーグトップタイの9勝(1敗)を挙げ、防御率も同2位の2.10と現在ブレーク中の19歳左腕・宮城(オリックス)や、同じくセ4位タイの7勝(5敗)、同3位の防御率2.42、リーグダントツの112奪三振の柳(中日)、同トップの9勝(3敗)を挙げている高橋(巨人)は選外だった。
「宮城は今や球界ナンバーワン左腕。5~8試合の短期決戦で最も重要なのは、今調子がいい選手をいかに見極めて使うか。勢いのある選手を選んでいないことが大きな不安材料」(高橋氏)
08年の北京五輪は星野監督が「全勝優勝」を目標に掲げながら4位に終わった。
当時のメンバーだった稲葉監督は、テレビや新聞のインタビューで「北京での全勝優勝は私の中で凄くプレッシャーがあった。苦しさがあった。最後に優勝すればいい。精神的な部分で選手を楽にさせてあげたい」と何度も語っている。
そのため、「え? ここでこの投手? といった起用もあり得る」とも明言している。つまり、負け試合で「敗戦処理」を使うこともあるということだ。
全勝なら5試合。ルール上は4勝3敗でも金メダルの可能性があるが、最大8試合の過酷な連戦が待っている。
「6チームしか出場しない五輪の野球にさほど価値は見いだせないが、それなら5戦全勝の金メダルしかない。この酷暑の中、屋外球場で戦うなら最短で勝つ戦略を立てるべき。もちろん4勝3敗の戦略も立てなきゃいけないが、5戦全勝を目指した上で負けた時に対応すればいい。大っぴらに『負けていい』と言うのはいかがなものか。一番重圧がかかっているのは、他ならぬ稲葉監督だと思ってしまいます」(高橋氏)
ともあれ、不安な船出である。