<4>「東洋の魔女」を口説くため、仕事が終わるとニチボー貝塚へ日参した
前回の東京五輪で国民を沸かせたのは、女子バレーボールの「東洋の魔女」たちだ。注目のソ連(現ロシア)との決勝戦は、視聴率(NHK)が66.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区平均)を記録。一時は85%までいったという。
「東洋の魔女」は大日本紡績(ニチボー、後のユニチカ)貝塚工場の女子チームが主体で、シューズはベアー社のものだった。五輪後、大松博文監督から小島孝治監督に代わってもシューズは同じメーカーのものだった。
私は五輪の翌年に結婚。2年ぐらい経った頃だ、朝礼で鬼塚社長が全日本のシューズに触れた。
「誰が東洋の魔女にオニツカを履かせるか」
社内で話題になり始めた。販促担当の魂に再び火がつき、ニチボー貝塚への日参を決意した。神戸(板宿大田町)にあるオニツカ本社を終業時間の16時30分に出て、片道約2時間。訪問初日は工場内にあるコートで小島監督やコーチに挨拶したが、まったく相手にされなかった。練習を最後まで見学し、帰宅したときは0時を過ぎていた。