<8>高橋尚子は五輪直前に左脚を故障、シューズに対する考えを変えた
帖佐氏に帰国するように言われた小出監督は、日本に戻らず合宿地の米ボルダーに向かい、高橋にカイロプラクティック治療を受けさせていた。激怒した帖佐氏は電話で小出監督を怒鳴りつけ、2人を帰国させると、スポーツドクターの名医である小山由喜先生の病院に行けと命じた。帖佐氏から私に電話があったのはその直後だ。
「植月君、高橋と小出君を小山君の病院(三重県津市)に行かせた。三村(仁司)君を連れて病院に行ってくれ」
三村とは、オニツカ時代の76年から特注シューズの製作を担当。同年モントリオール五輪から国内外の陸上選手にシューズを提供していた腕利きのシューズ職人だ。
元陸上選手の小山医師は、選手の故障原因は身体的特徴や走り方だけでなくシューズにもあるという考えから、世界のスポーツシューズを集めてパーツごとに分解し、材質や構造も調べていた。帖佐氏は小山医師に高橋の治療を依頼した際、「シューズ担当者も病院に寄こしてください」と言われ、私と三村君を三重へ向かわせたのだ。
■「以前のものに戻して欲しい」