彭帥さん問題どうなる? IOCバッハ会長と“渦中”の張高麗元副首相は仲良し

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 中国の女子プロテニス選手の彭帥さん(35)が「チャイナ7」といわれる中国共産党の最高権力者の1人だった張高麗元副首相(75)から「性的暴行を受け、不倫関係にあった」と自身のアカウントで中国版ツイッター・ウェイボーに投稿した後、所在不明になっている問題。来年2月に北京五輪開催を控える中国政府は事態の火消しに躍起で、疑惑は深まる一方。米国や欧州など国際社会による五輪ボイコットも現実味を帯びてきた。あらためて、この問題のギモンをまとめた。

①そもそも「チャイナ7」とは?

 全国に約9500万人以上の党員を持つ中国共産党。そのトップに君臨する総書記をはじめとする7人の政治局常務委員のことだ。序列1位は「紅い皇帝」とも呼ばれる国家主席の習近平・総書記(68)。ほかに首相や中国の国会にあたる全国人民代表大会常務委員長などがいる。

②「カンフー・パンダ」と「くまのプーさん」の意味は?

 中国国際テレビ局CGTNの編集者・沈詩偉氏とタブロイド紙「環球時報」の編集長・胡錫進氏がそれぞれツイッターに投稿した彭帥さんの自撮り写真。そこにはパンダのぬいぐるみを手にした彭帥さんの背景にアニメのキャラクターの「くまのプーさん」が写り込んでいた。

 中国では「パンダ」は公安部の政治安全保衛局、「プーさん」は習近平国家主席を指す隠語であることから、公安機関に軟禁されている彭帥さんが外部に何らかのメッセージを伝えようとしている」との憶測や、逆に「彭帥さんは自由の身で検閲などしていないという当局の情報戦略」という見方も出ている。

③彭帥さんの写真や動画を「公開」している「CGTN」「環球時報」とは、どんなメディアなのか?

 パンダとプーさんが写っていた彭帥さんの自撮り写真をはじめ、彭帥さんが北京の有名レストランでコーチや友人たちと食事したとされる動画、北京で開かれたとされるテニスイベントの様子などは、CGTN編集者や環球時報編集長を名乗る人物が英語でツイッターに投稿している。

 その「CGTN」は、国営テレビ局「中国中央電視台」が運営する多言語による国際ニュースチャンネル「中国グローバルテレビネットワーク」の略称。「環球時報」は、1993年に創刊された中国共産党の機関紙「人民日報」傘下のタブロイド紙。アメリカ国務省は、同紙を独立した報道機関ではなく、中国共産党の宣伝・諜報機関と認定している。

 ちなみに彭帥さんの問題は、中国国内では全く報道されていない。中国で米CNNテレビやNHK海外放送のニュース番組で彭帥さんをめぐる動向を伝えようとすると、突然放送が遮断される事態がしばしば起きている。

④IOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長と張高麗氏の関係は?

 バッハ会長は2013年の就任後、真っ先に中国を訪問するなど、もともと中国寄りの姿勢が鮮明だった。一方、張高麗氏は2013年から2018年まで副首相を務め、その間、北京2022冬期五輪の誘致に中心的な役割を果たし、五輪開催を実現させた。中国がIOCとの関係を強化する中で、張氏はバッハ会長と昵懇の仲となった。2016年に北京を訪問したバッハ会長が共産党の建物で張氏と会談し、ガッチリと握手する写真がネットで拡散されている。

 バッハ会長と中国政府及び張氏との親密な関係を考えれば、中国政府による「情報工作」との声が出ている彭帥さんとのテレビ会談にバッハ会長が応じたのも当然といえる。「ぼったくり男爵」といわれるバッハ会長にとっては、1人のテニス選手の人権よりも、巨額のチャイナマネーの方が大切なようだ。

 国際人権団体のアムネスティ・インターナショナルで中国を担当する研究員アルカン・アカド氏は「IOCは危険水域に突入している。人権侵害のいかなる隠ぺい工作にも参加しないよう、細心の注意を払う必要がある」と警告している。

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