広島・菊池涼介の覚悟「誠也がいないから弱くなった」とは言わせない
広島・菊池涼介(31歳/内野手)
昨年は侍ジャパンの一員として東京五輪で金メダルを獲得した広島の菊池涼介内野手。最終的に打率2割7分7厘、16本塁打、60打点をマークし、本塁打、打点は自己最多だった。9年連続ゴールデングラブ賞を受賞するなどフル回転した一方で、5月に新型コロナウイルスに感染。チームを離脱するなど、苦しい1年でもあった。ポスティングシステムを使い、メジャーリーグ挑戦を表明している後輩・鈴木誠也への思い、後釜指名など、新春独占インタビューで大いに語った。
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──昨季、滑り出しは首位打者だった。
「自分自身の滑り出しは良かったんですけど、チームとしては勝てていませんでした。そんな中、5月に新型コロナウイルスに感染して離脱してしまいました」
──5月17日に「陽性」の診断を受けた。
「前日はマツダスタジアムで試合に出て、そのまま自宅に戻りました。翌朝、起きると汗びっしょりで、体温を測ると39度を超えていたんです。すぐに球団に電話をして病院で検査を受けると、結果は陽性。外食はしていないし、外部との接触は遠征の移動の時ぐらいだったので信じられませんでした。熱は39.8度まで上がり、体のあちこちが痛く、寒けもあってきつかった。他の選手、コーチもコロナ感染が分かり、試合は延期。本当に申し訳ない気持ちでした。チームに迷惑をかけたので苦しかったですね」
■コロナ明けは一塁で息切れ
──陰性になってからは?
「肺炎がなかったのは幸いでしたが、全く動けずに1週間から10日。1週間で陰性になったので、すぐにバットスイングを始めましたが、筋肉も肺活量も落ちていました。一塁までダッシュするとゼーゼーする感じ。10日間もブランクがあると、打つ感覚も鈍る。実戦は二軍で1試合出ただけで『早く復帰して欲しい』と言われた。チームとして苦手としている交流戦中だったし、ゆっくりしていられませんでした」
──昨年の東京五輪では、正二塁手として金メダル獲得に貢献した。
「僕の出身地の東京で開催されるオリンピックは、やっぱり特別なものでした。前回(2017年)のWBCも経験したけど、プレッシャーが全然違う。無観客でシーンとした空間の中、真剣勝負をするのは難しかった。一見、満員の方が重圧がかかりそうですが、声援だったり、一球一球の盛り上がりを相手がプレッシャーに感じてくれれば、後押しになる。思えば、これまでの31年間の人生で、五輪は見るものだったのに、そこに自分が出ているのは不思議な感覚でした。『勝って当たり前』と言われる中、何とか使命を果たすことができた金メダルは、僕の一生の宝物です」
後釜候補に俊足選手を指名
──チームの主砲で、侍ジャパンでも4番だった鈴木誠也がメジャー挑戦を表明しています。
「高卒新人の頃は、あんなに細かった誠也が今ではゴリゴリの体をしています(笑い)。あの頃は着る物にも無頓着で、いつも同じ白いスニーカーを履いて出掛けていた。汚れていても全然気にしない。『白い靴は白く履けよ』と言っても聞かないから、靴をあげたり洋服をあげたりしましたね。今では結婚して、すっかりおしゃれになりましたけど」
──それがメジャー球団と100億円規模の契約を結ぶ可能性もある。
「そんな誠也がメジャーリーガーになるなんて夢のようですね。カープとしてはもちろん痛いですよ。でもあんまり悲観はしていないんです。秋季練習で林あたりは、誠也の後釜になろうと猛練習したみたいだし、『やってやるぞ』と心を燃やして春のキャンプに来ると思います。若手にとってはチャンスなので、掴みとって欲しい」
──鈴木選手の後釜候補は?
「ならないといけないのは野間ですね。もともとポテンシャルは高い。センターの守備範囲が抜群に広くて、ほかの選手とは全然違うので、セカンドにいて安心感があります。今年こそ出てこないとダメ。僕はずっと野間の覚醒を待っているんです」
■昨季終盤の戦い今季に光明
──チームは9月から10月にかけて2度6連勝があるなど、後半戦に調子を上げた。22年の抱負は?
「シーズンの最後の方は、チームも自分も好調で、いい流れをつくることができた。打線のつながりだったり、やっとチームに『らしさ』が出てきた。だから、今年は面白いかなという感じがしているんです。やっぱり勝たないと面白くない。ファンの方たちもそうでしょう。僕も11年目。若い選手に寄り添って伝えられることは伝えていきたい。ファンの方に1試合でも多く勝ち試合を見せたいですね。目指すところはリーグ優勝の奪回と日本一。誠也がいないから弱くなったとは言わせません」
(聞き手=増田和史/日刊ゲンダイ)