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藤田信之日本実業団陸上競技連合顧問

1940年10月、京都府出身。洛北高卒業、京都市職員を経て68年ユニチカ陸上部コーチ、72年監督就任。86年ワコール初代監督、99年グローバリー初代監督、2005年シスメックス初代監督、11年同陸上部顧問退任。現在、日本実業団陸上競技連合顧問。

レース当日まで野口みずき本人にも黙っていた アテネ五輪での“大きな賭け”

公開日: 更新日:

 作戦はレース当日まで野口には黙っていた。ゴールの17キロも手前で飛び出せと言われたら、誰だってびっくりするし、過大な重圧もかかる。後から聞いた話では、レース当日に作戦を伝えられたときはやっぱり嫌だったそうだ。逃げ切れるか不安だったのだろう。

 試走時に25キロとわかる目印を探した。野口は150センチと背が低い。沿道に大観衆がいても邪魔されずに見える高い位置におあつらえ向きというべきスーパーマーケットの赤い大きな看板があった。

 レースは午後6時スタート。気温35度。ウオーミングアップの時、初めて「25キロからロングスパートするぞ」といったら、野口はうすうすわかっていたようだ。

 高低差200メートル。五輪史上最も過酷といわれるコースで30度を超える気温に耐えられず、多くの選手が脱落していった。野口は作戦通り25キロ過ぎにギアをチェンジ。アレム(エチオピア)、ラドクリフ(英国)、ヌデレバを引き離しにかかる。

 30キロでは2位のアレムに24秒差。ヌデレバには37秒という大きなリードを奪う。優勝候補の最右翼だったラドクリフは徐々にスピードが落ち36キロで止まった。猛暑で体力を奪われたのだ。

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