風呂場をピカピカに磨いた19歳の蒼国来 苦しい中でも変わらぬ気遣い
蒼国来を風呂に入れさせ、次に私が風呂場に入って驚きました。どこもかしこもピカピカに磨かれていたんです。来日当日、明日にはまた別の場所に出発する強行軍の中、たった1日泊まった風呂をここまで奇麗に掃除するなんて……。思わずウチのおかみを呼んで「ほら、見ろ見ろ」と2人で目を丸くしました。そうした気遣いができる子なんです。
荒汐部屋を出た後は都内に住む同郷の友人宅を転々とし、公園でモンゴル相撲、ブフの稽古もしていました。でも、それだと稽古に限界がある。いざ土俵復帰がかなった時に、「稽古が満足にできなかったので体が鈍り切っています」では本末転倒です。
そこで私は後援者の方々から日野自動車のラグビー部を紹介していただき、蒼国来を練習に参加できるようお願いしました。ラグビーの練習と相撲の稽古は違いますが、トレーニングや体力づくりだけはやれる環境にいないと困ると思ったからです。
実際、私が彼にできることは多くはありませんでした。むしろ、後援会やファンの方々の支えが一番の力になったはずです。裁判中も後援会の方々が「蒼国来を囲む会」などを開催して励ましてくれましたし、ネットを中心とする有志の皆さんは署名活動を行ってくれました。
そうした念願がかない、13年に解雇無効を勝ち取り、同年の7月場所で土俵に復帰できた。あの時の思いを、私は忘れることはないでしょう。 (つづく)