琴富士孝也さん“波瀾万丈”の元関脇は脳梗塞リハビリ中…91年に平幕優勝も偽装結婚で逮捕
琴富士孝也さん(58歳)
阿炎の初優勝で幕を閉じた昨年の大相撲11月場所。連日、熱戦が繰り広げられたが、11月21日の9日目は珍手「合掌ひねり」が決まり手となり話題になった。両手で相手の顔を掴んでひねり倒す力技。幕内では1965年11月場所9日目に大心が前田川に、十両では87年9月場所12日目に琴富士が南海龍に決めて以来だ。このうち本欄が過去に取材しているのが琴富士さん。ところが今、大変なことになっていた!
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「もうご覧の通りで、ずっと寝たきり。心臓の手術後、脳梗塞を発症したからです。意識はあって、喜怒哀楽や意思表示は顔の表情や左手の動作でわかるのですが、会話はできず右半身も麻痺して動かせません。しかも右足の親指は糖尿病による壊疽のため切除しました」
こう話すのは、琴富士さんがタレント業と神戸市内でリラクセーションサロン「もみ相撲 琴富士」を経営していた頃のマネジャーさんだ。
琴富士さんと会ったのは同市内の自宅・1DKマンション。特大サイズの介護ベッドに191センチの巨体を横たえており、約2年ぶりとなる記者の顔を見ると表情が少し緩んだ。
「前回20年11月に『もみ相撲』に来ていただいた頃、すでに力士時代から抱えていた糖尿病や痛風、高血圧、慢性腎臓病などの生活習慣病で体調は良くなかった。軽い脳梗塞で倒れたことがあり、その時の診断は『右目の奥に動脈硬化のような塊がある』。それで血液をサラサラにする薬を飲み、食事にも気をつけていたんですけどね」(マネジャー)
そして年が明け、21年2月初旬までは激しい運動はできないもののユーチューブ「琴富士チャンネル」を更新していた。
マネジャーが続ける。
「1月の検査で冠動脈に9カ所も狭窄しているのが判明し、2月16日にバイパス手術をすることに。ところが8日、脳梗塞の一歩手前の一過性脳虚血発作で失神、救急搬送されてガタッと体調が悪くなりました。ほんの数百メートル、ゆっくりゆっくり歩いても息も絶え絶え。そんな状態での8時間に及ぶ大手術だったので、本人は“万が一”を覚悟したそうです」
手術は無事成功。「10日ほどで退院」と担当医から告げられホッとしたのも束の間。さらなる試練が待っていた。
「18日になっても全身麻酔から覚めないので検査したら、なんと脳梗塞。それで体調を見ながら、21日に頭蓋骨の一部を取り外して脳浮腫を防ぐ『減圧開頭術』という手術をして九死に一生を得ました」
外した頭蓋骨は左眼窩の上、大きさは7、8センチ四方ほど。現在は頭蓋骨がない部分はベッコリとへこんだままだ。
「人間の体って凄いんです。頭蓋骨がなくても、以前にもまして黒々と髪の毛が生えてきたんですからね。写真だけだと、『カツラ?』って聞かれるのですが、全部地毛なんですよ」
その後、21年4月にリハビリ病院へ転院。同9月に誤嚥性肺炎でまたまた三途の川の一歩手前まで行ったが事なきを得た。そして翌年4月、晴れて退院し、14カ月ぶりに“シャバ”に生還した。
■訪問看護師と介護ヘルパーが24時間体制でケア
「今は訪問看護師さんと介護ヘルパーさんが延べ15人でチームをつくり、24時間体制でケアしてくださっています。ケアスタッフの皆さんが明るくて親身にお世話してくださるので、体調はどんどん良くなっています」
最初の手術前に100キロを超えていた体重は退院時に79キロまで落ち込んだものの、今は90キロまで戻ったという。