リアル二刀流を生んだ自信と末っ子気質とアタマ
来季以降はおそらく米スポーツ界史上最大の契約に
■「ヒリヒリする9月を過ごしたい」
12年夏、韓国で行われた世界大会に出場したU18日本代表はそうそうたるメンバーがそろっていたにもかかわらず、結果は6位。日本ハム時代の16年にリーグ優勝、日本一にもなっているものの、翌年のWBCはケガで出場を辞退。世界一を狙う場にすら立てなかった。
そして17年オフ、エンゼルスに移籍。最優秀監督賞2回のマイク・ソーシア、同3回のジョー・マドンという名将のもとでプレーするも、チームはふるわない。過去5年はすべて負け越し。ワールドシリーズ制覇どころか、プレーオフにすら進めない状況が続いている。
早々とプレーオフ争いから脱落した21年の本拠地最終戦。大谷は「2番投手」で出場して7回1失点と好投するも、チームは敗戦。降板後はダッグアウトでバットを叩きつけた。試合後の会見では、2年後にFA権を取得するがエンゼルスに残りたいかと聞かれ、こう答えている。
「ファンの人も好きですし、球団自体の雰囲気も好き。ただ、それ以上に勝ちたいという気持ちが強い。プレーヤーとしてはそれの方が正しいんじゃないかと思う。もっともっと楽しいというか、ヒリヒリする9月を過ごしたい」
この年は投げて9勝、打って46本塁打。二刀流で結果を残し、ア・リーグMVPを満票で獲得した。自身は投打にフル回転するも、チームは負け越し。プレーオフにすら進めない現状に怒りが爆発、移籍志願とも受け取れる発言につながったとみるべきだ。
■初の世界一をつかむチャンス
大谷は昨年11月から年明けにかけて、エンゼルスの編成責任者であるミナシアンGMと何度か話をしている。今季終了後にFAとなるだけに再契約問題かと思ったらそうじゃない。大谷は今季に向けた補強の現状をGMに尋ねたという。勝てる球団になるのか、そのためにチームはどういった補強をするのか、気になって仕方がないのだ。
今季はレギュラーシーズンに勝ってプレーオフ進出、02年以来となる21年ぶりのワールドシリーズ制覇が最大目標とはいえ、開幕前に野球の世界一を決める国別対抗戦のWBCがある。
エンゼルスとは契約最終年。残留するにしろ移籍するにしろ、来季以降はおそらく米スポーツ界史上最大の契約になると早くも米メディアがかまびすしい。
投打の二刀流は、ただでさえ心身の負担が大きい。加えて今季は投手として中5日でのフル回転を期待されている。失敗の許されない重要なシーズンだが、それでも大谷にとって今回のWBCは、初の世界一をつかむ大きなチャンス。1月6日の会見には指揮を執る栗山監督とともに出席、
「優勝だけを目指して頑張りたい。体調はいい。このままの流れでいけば、いい状態で臨める」と意気込みを語った。
メジャーリーガーは3月6日の強化試合(対阪神)まで実戦に出られないため、宮崎合宿でなく米アリゾナで調整。エンゼルスの野手組のキャンプが始まって早々、ライブBPでは156キロをマーク。打っても柵越えを連発。
「(体調は)いまのところは申し分ない感じかなと。去年よりもさらにいいですし、いままでの中でも一番いいかなと思う」と手応えを口にしている。
初の世界一へ向け、視界良好だ。