「自分で昇進ムードを盛り上げなくちゃ」千代の富士時代から様変わりした稽古総見の意義
夏場所が14日に始まった。3場所連続全休明けの照ノ富士をはじめ注目力士が多く、中でもかど番で初日を迎えた大関貴景勝、大関昇進に挑む霧馬山の土俵は、番付に欠かせない大関の存在を左右するだけに目が離せない。
場所前の4日、横綱審議委員会の稽古総見があった。コロナ前の2020年初場所前以来だ。
4月末の巡業で霧馬山に総見への意識を聞くと、「自分のペースでやればいいと思うけど、親方衆がいっぱいいるからやる気を出していかないと」と答えた。綱とりではないから横審にアピールしなくてもいいが、注目される場で好印象は残したい、といったところか。
当日、霧馬山は幕内の稽古で最初の2人が取り終わるとすぐに土俵へ入り、申し合いを10番取った。ただ、その後は照ノ富士が土俵へ入っても手を挙げず、親方に促されて2番だけ胸を借りた。横綱の膝の調子が分からない怖さもあっただろう。
元横綱千代の富士の九重親方は、昇進を懸けた力士が場所前の総見でパッとしないと、よく苦言を呈したものだ。
「ガンガン稽古して新聞にガンガン書いてもらって、自分で昇進ムードを盛り上げなくちゃ」
千代の富士自身も同時代の横綱・大関候補たちも、そうしたものだ。強くなったな、昇進すれば相撲人気が出そうだなと他の力士たちにも印象付けることで機運が盛り上がり、昇進への道が開けるように思えた。昇進が懸かる力士がいなくとも、総見の顔ぶれや熱気は壮観だった。