巨人原監督“急転解任”の全舞台裏 後任の阿部慎之助HCは前途多難…由伸氏就任時と状況酷似
独善に拍車をかけた「全権監督」
監督通算17年で巨人史上最多の通算1290勝を積み上げてきた原監督は、リーグ優勝9度、日本一3度。その実績を背景に、19年に3度目の登板が決まった際は、球団からチーム編成権も託される「全権監督」として迎えられた。
しかし、これが結果的に独善を加速させ、復帰1年目からリーグ連覇を果たしたものの、日本シリーズでソフトバンクに2年連続で4連敗を喫するなど歯車が狂い始めていた。今季は18年ぶりに優勝した阪神に6勝18敗1分け、3日現在2位タイの広島に8勝17敗と圧倒されるなど力の差を見せつけられた。ここまで70勝70敗2分け。4日の最終戦に敗れれば、3年連続で借金を抱えたままシーズンを終える。
■チーム状態が下降線をたどる中でのバトンタッチ
そんなボロボロになったチームの再建を託される阿部ヘッドは19年オフに現役を引退。20年から二軍監督、22年に一軍作戦兼ディフェンスチーフコーチ、今季はヘッドコーチと主要ポストを歴任し、経験を積んできた。
「二軍監督時代は『ファームに勝ち負けは関係ない』と選手育成に軸足を置き、同時に選手には常に実戦を意識させて一軍昇格の足がかりをつかませた。ファームの中軸を任せた選手には、打席ごとに『ここは1球で仕留めてこい』と指示。『一軍では代打が多いだろうから、二軍でも1球で仕留められなかったら終わり。常に2ボールのバッティングカウントだと思って1球に集中しろ』とその意味を説いていました。
妥協を許さず、プロアマ交流戦で早大に敗れた際にはベンチ入りした全選手に罰走を命じるなど前近代的なやり方が問題視されたこともありますが、もともとが親分肌で坂本勇人(34)らの兄貴分的存在。今季、一軍の舞台を経験した若手の成長を加速させながら、ベテランの力を融合させるという意味では適任だと思う」(ファーム関係者)
前回、15年に退任した原監督の後を受けて就任した高橋由伸前監督は3年間で2位、4位、3位と優勝できぬままユニホームを脱いだ。世代交代の過渡期に加え、野球賭博問題が勃発して窮地に陥ったチームの難しいマネジメントを押し付けられて、周囲から「原監督の犠牲者」と同情された。
チーム状態が下降線をたどる中でのバトンタッチという意味では状況は酷似している。阿部巨人の前途は決して明るくはない。