《中村晃の巻》プロ2年目を終えた未来の打撃職人に「ホームランを打て」とあえて注文を出したワケ
当時の五十嵐章人二軍打撃守備コーチとはこんな会話もありました。
「田尻さん、新人の晃ですが、僕に外野守備をイチから教えて下さいって来ましたよ」
「え? アイツの売りって高校通算60本塁打の打撃ちゃうの?」
「違うんですよ。最初に僕にかけてきた言葉が『守備を教えて下さい』だったんです」
五十嵐コーチは「こんなの初めてですよ」と、うれしそうに話していました。
そんな中村に僕はひとつ、注文を出したことがある。2年目に二軍で打率3割を打った年の納会でのことです。中村は「初めて3割打ちました!」と報告してきたので、僕はこう言いました。
「ひとつ注文していいか? ホームラン打て。今年何本? 0本? おまえが守る一塁や外野はパワーヒッターのポジションや。ヒットを打つ技術があるのは知ってる。でも、ホームランを打てないって相手に思われると、外野はどんどん前に出てくるよ。そうするとヒットも減るよ。大きいのが打てるイメージを少しでもつけないと、将来的に苦しくなるよ」